繁殖の巫女(R18)
□子孫繁栄祈願
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「紗依子、やったんだって」
「えっ?まじか?いつ、どこで、誰と?」
放課後の教室でその手の話をすると、聞こえた範囲のほとんどの人が聞き耳を立てる。なんたって男子の目を気にする必要のない女子高。好奇心旺盛な女の子たちはその手の話に興味津々だ。
茜だって例外ではない。エッチい話は大好物だ。そう。話を聞くだけならぜんぜん問題ない。あえて言うなら、エッチいビデオを見るのもOK。
だけど、するのはいけない。いたすということは、男の子の精子が子宮に入るということで、いくらコンドームをしていたって、ピルを飲んでいたって、間違いは起きるときには起きる。
それは我が家の両親で実証済みだ。
母が最初の娘、桜を妊娠した時、ふたりは結婚していなかった。お互い学生で、慎重すぎるほど慎重に避妊したが、どうやったかわんぱくな精子は薄い膜をかいくぐり、卵子に襲いかかった。
ふたりは姉が産まれる1ヶ月前に入籍した。父、22、母、18歳だった。それから杏、柊と年子で子どもをもうけている。
さすがにこれ以上は、と両親は避妊に気をつけが、3年後、またも間違いは起きた。次男、樹の懐妊だ。2度あることは3度ある。茜は3度目の間違いの結果だった。
代々、美濃部家は多産の家系だ。父方の祖父は13人の兄弟姉妹で、父にも7人の兄弟姉妹がいる。さらに言うなら、長女の桜は、25ですでに4人の子持ち、腹の中に5人目がいた。一族全員がそんな感じなので、親戚の集まりになると、すごいことになる。
すなわち、そのひとりである茜も例外ではないということだ。となると、どうしてもお気軽なアバンチュールなどご法度。セックスには慎重になる。これまで子どもを持つ覚悟も経済力も持ったことがないので、当然、茜は処女だった。
だけど、頭の中でするセックスは安心安全。いやらしいことは考えるわけだ。もちろん、ひとりエッチも許容範囲。多産な家系だけあって、性欲は旺盛で、快楽に対する興味は尽きなかった。
だから茜はクラスメートの話を貪るように仕入れ、その日の夜、それをおかずにオナニーにふけった。自分なりの方法で絶頂を迎え、気持ちよくベッドに沈んだ。
ところがその数時間後、茜はいきなり冷たい水にさらされ、飛び起きた。真っ先に思い浮かんだのは集中豪雨か何かで、家が浸水したんじゃないかということ。
ところが、そこは家でさえなかった。広さ10畳ほどの鍾乳洞のようなところで、丸い石のたらいの中で水に浸かっていた。周りをぐるりと見知らぬ人たちに囲まれ、声も出せない。
それが茜の異世界生活の始まりだった。
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繫殖の巫女を読んでくださり、ありがとうございます。
人物紹介
*美濃部 茜 女子高生
*ハラン・シャスター・トレニア(66歳) トレニア国王
*シオン。ランカナ・トレイア(25) トレニア国、第1王子
*ギラン・トベラ・トレニア(20) トレニア国、第2王子
*シラン・イキシア・トレニア(12) トレニア国、第3王子
*ガイ・トベラ(45) トレニア国、宰相
*ムスカリ(51) 子孫繫栄の神官長
*ミクリ(76) 魔力の神官長
*バンダ(27) 武力の神官長
*ハルニレ(33) 財力の神官長
*カルカヤ(24) 病払いの神官長
*ルピナス(19) 魔力の神官(後半に登場)
*カナム(48) 子孫繫栄の神官(後半に登場)
(登場人物の名前のほとんどが、植物図鑑から名づけました。)