繁殖の巫女(R18)

□交接の儀
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 病払いの神、ママコナ神に仕えるカルカヤは、繫殖の褥で交わされる会話に耳を澄ませた。
 巫女は今日も元気に怒鳴っている。
 交接の儀はこれが7回目。カルカヤの予想では、この頃には巫女も快楽に従順になり重力の魔法は必要ないと思っていたが、今日も自由を奪われての儀式だ。
 罵声を浴びせられるお相手はシオンさまで、これまたのらりくらりと巫女の怒りをかわしていた。

 「こら!勝手にさわるんじゃねぇ」また威勢のいい声が聞こえてきた。
 どうやら紫の君の口説きのテクニックが始まったらしい。
 この世界の娘なら喜んで身を任せるところを、異界の娘は毎回はねつけている。

 「絹のように美しい肌を見て、触らずにいられるわけがない」紫の王子が砂糖を吐きそうなことをさらりと口にした。

 「なら、見なきゃいいじゃん!」

 「アカネちゃんは美しいものを見て、愛でずにいられる?」

 不毛な争いだ。いくら抗っても行きつく先は決まっている。王子は何を言われようが、彼女を抱かずにいないだろう。それくらい少女にはまっていた。

 彼女に魅せられたのはシオンさまだけではない。熟女好きのギラン王子でさえ床をともにしてからこっち、他の男に彼女を触らせまいとする。シラン王子は会ったその日から夢中だ。
 前回の交接の儀では精根尽きるまで巫女と番い、射精してそのまま眠りに落ちた。しびれを切らしたムスカリに起こされるまでの短い時間、彼女の中で見る夢はさぞや官能的であっただろう。

 巫女を取り囲む神官たちも同様であった。女に見境のないムスカリはもちろん、枯れ親父と思われたミクリ殿でさえ頬を染めている。バンダはあれこれ世話を焼きたがっているし、ハルニレは貢物をしては機嫌を取ろうとしている。

 1番身近で少女に触れる機会の多い彼も例外では無かった。外面的には職務に徹しているが、内心、ひどく惹かれている。しょっぱなの診察では不覚にも感情を表に出してしまった。
 もちろん同情もある。見知らぬ世界にさらわれてきて、見知らぬ男たちとの生殖を強要されたら、たいていの女は気が狂うか自決しているはずだ。当然、彼の行う診察もかなりの負担になっているだろう。
 それなのに何度、儀式や診察を重ねてもへこたれない。鋼の精神力で言葉の限りを尽くして闘う。相手が王族だろうが思ったままを口にする。さぞや王子たちには新鮮に映っていることだろう。彼女の気の強さは天下一品だ。動けたら暴力だって辞さなかった。実際、彼は振るわれた。そうされて当然だった。

 彼女にはあのままでいてほしかった。繫殖の巫女の役目を終えるまで、なんとか持ちこたえてほしい。そのためなら許される限りそばにいて、守る。気が晴れるなら、頬だって差し出そう。儀式の大筋は変えられないが、なるべく負担が少なくなるように巫女の気持ちを尊重するつもりだ。
 そして国が巫女を必要としなくなったとき、自分がアカネ・ミノベという女性を引き受けるつもりでいた。いや、選んでもらう。今はただ、彼女を支えるのが務めだった。

 「んんん……」繫殖の巫女のくぐもった声が聞こえてきた。

 「ほうら、気持ちいいでしょ?もう1本、指を入れてあげるね」

 「うう……ん」

 繁殖の間はどんな音も聞き漏らすまいと、静まり返っている。どいつもこいつも赤ら顔で褥に注視していた。
 自身も平静な顔色でいられているか自信がない。
 特に子孫繫栄の神官長は褥近くかじりつき、鼻息まで荒かった。あそこまで近づけば、どんな小さな音も聞こえるだろう。本来なら皆とともに並んで種付けを待つべきなのに、彼が褥のそばを離れたことはなかった。見てきた限り、ムスカリは儀式の神聖さより己の劣情を満たすことの方に熱心なようだ。

 「あっ、やめ、やめ……ろ、あぁっ」

 「アカネちゃんのつゆは甘いね。ここがいいんでしょ?」
 白い幕越しに、巫女にのしかかる紫の君の姿がおぼろげに見える。

 「んんん――」少女の切羽詰まった声が聞こえた。

 「あれれ。アカネちゃん、ひとりでいっちゃたの?ずるいなぁ」

 巫女の返事はなく、荒い息づかいだけが流れてくる。ニチャニチャとここまで水音が届くようになった。嫌がってはいるが、少なくとも彼女は苦痛とは無縁にあるようだ。
 だが、まだ合体まではしていない。挿入すれば、かの王子は声をあげずにいられないのだから間違いなかった。

 「やぁ……も、ダメ、ダ……あっ、あっ、あ……」

 「またひとりで昇天するつもり?ずるいよ」
 甘い声があがり始めたところで、意地悪な声が言った。濡れた音が止み、巫女も沈黙する。
 しばらくすると、また水音がたち始めた。  「ふたり一緒でないと、昇天させてあげないよ」
 シオンさまは巫女を焦らしているようだ。どうやら彼女におねだりさせたいらしい。

 それから少女は2度、焦らしに耐えたが、それが限界だった。
 「お、ねが……」静まり返った部屋に、弱々しい懇願が聞こえた。

 「喜んで」

 薄布越しに細い脚が持ちあげられるのがうっすら見えた。ふたつの影が絡み合う。
 「はぁ……」

 「あぁ――、きつっ」
 褥の様子が手に取るようにわかった。
 「こんなに一生懸命、私に絡みついて。アカネちゃんはかわいいなぁ。ほうら、奥まで入れてあげるね」

 ぬちゅう、ぐちゅう。とんでもなく卑猥な音が聞こえてきた。これだけ濡れていたら、肉壺が傷つく心配はないだろう。

 「くう……、アカネの中が身もだえして悦んでるよ」

  くちゅ、ぐちゅ、ぐちゃ。
 「ん、ん、ん……」

 「ああ、いいよ。最高だ。ほら、ここ。子壺の入り口がいいんだよね?いっぱい突いてあげるから、ふたりで気持ちよくなろうね」

 「ああっ、あ、あ、」

 「はぁぁ、しまるぅ……。私の精が欲しいんだね?」
 白い囲いの中で影が揺れている。

 カルカヤは身じろぎひとつせず、影の動きを見守り続けた。他の連中も同じようなものだ。ひとり残らず布一枚へだてた男女の交合に見入っていた。

 「はぁ、あぁ、アカネ、アカネッ」パンパンパンパン。
 にわかに中の動きが忙しくなった。女の脚が、男の肩の上でリズミカルに跳ねている。
 「いくよっ」

 「んあっ、あ、ぁ――」

 「全部、呑むん、だ……よっ」
 直後に一切の動きが止まった。褥は静まり返り、神官たちも息をつめる。
 今まさに王子の子種が巫女の子壺深く蒔かれているところだ。一滴もこぼすまいと、少女の腰を高くあげている。

 カルカヤは固唾を呑んで、神聖な種付けが終わるのを待った。

 「カルカヤ」意外にもシオン王子からお声がかかった。
 中の影は絶頂を迎えたときから動いていない。

 「なんでしょうか?」彼が呼ばれるときは医療に従事するときだけだ。煩悩をねじ伏せ、囲い近く寄った。

 「子種栓を頼む」

 「あのー」ムスカリが声をあげる。「私もよろしいでしょうか?」

 「お前はそこで控えていろ」

 みるみる子孫繁栄の神官はしょげかえっていた。

 カルカヤは道具箱を持って、ひとり繫殖の褥に入った。

 そこには全裸で絡み合う男と女の姿があった。男は膝立ちで細い腰を抱え、女は窮屈な姿勢で意識を失っている。欲望を放出したばかりの王子は気だるい色気に濡れ、男女の営みの頂点を極めた少女はまだあどけない。混じり合う黒と紫の陰毛がたまらなく扇情的だった。

 「抜いたら、ただちに子種栓を頼む」
 王子は心から子を望んでいるようだ。元々、羞恥心がないのか慣れたのか、はたまた開き直ったのか。シオンさまは恥じらうことなく雄芯を引き抜き始めた。

 カルカヤは子種栓の準備をして裸の男女に近づいた。
 つゆに濡れた肉塊が完全に抜け、たっぷりと精子を注がれた雌陰があらわになった。ピンクの花弁は開き、蜜と白濁に濡れている。
 王子に支えられ上を向く膣口に、さっそく丸い子種栓を押し入れた。
 達したばかりの膣が敏感に反応し、うごめく。
 彼は内壁を傷つけぬようゆっくりと子種栓を進めた。これは指先に伝わってくる感触がすべてだ。意識を集中し、感覚を研ぎ澄ませる。進入が重くなったところで挿入を止め、先端の玉に空気を送り込んだ。圧力加減は勘頼み。ふくらませ過ぎれば巫女の不快感が増し、足りなければ抜け落ちる。
 カルカヤはこれまで培った経験を駆使し、難なく設置を終えた。巫女の性器を丁寧に拭い、視診に移った。覗いた肉壺の中で子種栓は所定の位置に収まり、粘膜に傷はなかった。

 一連の診察を見届けた王子は、またもや予想外のことを言い出した。
 「今日は朝までアカネといてもいいだろうか?」

 「性交を我慢できるなら、構いませんよ」

 これ以降、交接の儀の相手は朝まで巫女といられるようになった。







 


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