イブの夜は更けて(R18)

□再会
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 翌朝、一馬は夜明け前には起きていた。夕べは気が高ぶってなかなか眠れず、今朝は同じ理由で目が覚めた。
 ようやく捺希と面と向かって会えたのだから、当たり前だ。一馬を見ても彼女が取り乱さなかったことで、大きなハードルを越えた気がした。

 彼女と連絡先の交換をし、――手続きの一環なのだが、顔がにやけた――契約を交わした。
 だが、この仕事は帳簿にはつけない。これはプライベートで、商売とは全く関係ないことだ。

 そして、さっそく今日会える。盗み見る必要もなく、堂々と……。彼女に触れることだって可能かもしれない。
 胸が躍った。彼女に触れるチャンスをいろいろ夢想しながら、待ち合わせた駅に向かった。そこで彼女を拾って、あの住宅に行くことになっている。すでに知っていることを気取られないようにしなければならない。

 捺希は、彼が思っていた以上に立ち直っていた。家を買い、家主になろうとしている。その先にさらなる大きな計画を立てていた。

 やっぱり彼女は氏島と別れて正解だった。あのクズは捺希の足元にも及ばない男だ。

 ふたりの間の垣根が取り払われたことで、思いを抑える必要がなくなった。
 その思いとは捺希と初めて会ったときにすでに蒔かれ、罪悪感を養分にしてジワジワと育ち、今でははびこっている。
 彼女の前に出られないことが足枷だったが、その問題はすでに片付いた。彼女を手に入れる。なんとしてでも。

 駅前に立つ捺希を見つめ、心に決めた。





 

 

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