イブの夜は更けて(R18)
□襲撃
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翌日の出社を、捺希は緊張して迎えた。知りたいような知りたくないような。昨日自分が話したことが、どういう結果を招いたのか気になる。燿子と真鍋がどうなったのか心配だった。
それなのに、いつもは早々に来ているふたりがまだ出社していない。
不安が一層、重く打ち出す。
思惑が裏目に出て、こじれていたらどうしよう?
じっとしていられなくなった。携帯電話を引っ張り出し、燿子に電話する。
ふたりがつらい思いをしていたときに、五十嵐と食事を楽しんでいたのかと思うと一生自分を許せそうになかった。
「捺っちゃん、どうした?」燿子のあっけらかんとした声が、いつもの様子で応えた。
だが、まだ安心はできない。
「いつもこの時間には出社されているのに、まだいらっしゃらないので……。大丈夫ですか?」
返事はなく、電話の向こうでくぐもった音がした。
不安が大きくざわめく。沈黙が捺希を責めているようだ。
「今、そっちに向かっているとこ」ようやく返事が返ってきた。
「あ、それと」ついでに何か思い出したかのようにつけ加えた。「母の一周忌が終わったら真鍋さんと結婚するから、捺っちゃんも出てね」いつもの飲み会に誘うかのような気安さで燿子が言った。
「え!?」
「そういうことだから、よろしく」
電話は切れた。
遅蒔きながら、社長の言ったことが頭の中で意味を成した。安堵と喜びがごっちゃになり、感激の涙が浮かぶ。
「よしっ!」思わず小さくこぶしを握った。
「朝から機嫌がいいなぁ」出社してきた渡辺主任が、これまたうれしそうに声をかけてきた。
「なんだか、いい日になりそうだと思って」ウキウキと答えた。
今日もいい天気だった。