イブの夜は更けて(R18)
□幸せと破滅の予感
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19時
氏島勇司は待ち合わせた広場に着いた。本来なら仕事が終わるのはもう少し遅いのだが、こういうとき営業は有利だ。今夜は顧客に会い、直帰することになっている。
勇司は背伸びして、イルミネーションで賑わう空間を見渡した。
見つけた。美羽にもわかるよう手を振る。
野崎美羽は19歳の女子大生で、ついていることにひとり暮らしをしていた。しかも、いい部屋だ。
彼女は何もかもが初々しかった。あっちの経験も乏しくて、文字通り手取り足取り教えるのに興奮した。大胆な体位を要求すると、赤くなってうろたえるのがたまらない。恥ずかしがる美羽を押さえつけて、繋がるのがつねだった。
積極的な香織も良かったが、美羽には違う良さがある。こうして見ると、なんとなく最初の妻に似ていた。
それにこのところ香織は赤ん坊にかかりきりだ。息子が産まれるまでは楽しかったが、産まれてからは泣き叫ぶ赤ん坊の声でおかしくなりそうになる。
だから、どうしても我が家から足が遠のいた。
こんなことになるんだったら、妊娠したというだけで結婚なんかするんじゃなかった。
あの頃は快活で楽しい香織に夢中で、妊娠したことを運命のように思った。親子3人のバラ色の夢を見ていたが、実際は糞まみれだ。
美羽が息急き切って目の前にやってくると、憂鬱な家族は忘れ去られた。
かわいい美羽をどぎまぎさせたくて、いきなり抱き寄せてキスをする。なにしろ広場のあちこちでカップルがいちゃついているのだ。
案の定、彼女は慌てて身体を引いて、あたふたと周りを見回した。
「勇司さん、だめ!」
なんてかわいいことを言うんだろう。勇司はほくそ笑んだ。
よし、今夜は玄関でやってやろう。部屋に入って安心したところを背後からシューズボックスに押さえつけて、入れる。
考えただけで奮い立ってきた。
「じゃあ、急いで帰ろうか?でないと、我慢できなくてもう1回キスするよ」
美羽がはにかみながらも、手を繋いできた。
勇司は彼女の手を引いて、マンションへの道のりを急いだ。
心は淫らな妄想でいっぱいだった。