short story

□溺愛ポーカーフェイス
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「うう〜あまううううう////」

 幸せそうな顔をしてパフェを頬張る北川が可愛くて、俺の顔まで崩れている気がする。

「美味しそうで何より」
「メッチャ美味しい!!大橋のおすすめの店ってだけある!!」

 普段の無表情の鉄仮面が嘘の様に俺の前で崩れているのが嬉しくて、にやけそうになる顔を誤魔化すためにチーズケーキを口に落とした。

「そいえば、さっきどうしていきなり甘いものが好きかって聞いてきたの?」
「え?いや、ただ甘い物食べて幸せそうに笑ってる北川が見てみたいって思ったから」

 さらっと言ってしまったが、よく考えれば結構恥ずかしいセリフにたまらず「冗談だ」と言おうとしたら、目の前の北川が熱でもあるんじゃないかって心配になるぐらいに真っ赤になっていた。

「もー大橋ずるい、ずるい、そんなの反則でしょ////」
 何がずるいのか良くは分からないが、照れて両手で顔を隠してしまった北川のご機嫌を取るために自分のケーキを一口目の前に差し出すと、そっと両手の隙間からこちらを伺って素早くパクッと口内に放り込んだ。
「……美味しいけど、こんなので機嫌直さないから」
 パフェを黙々と食べながら少しすねている北川にもう一口を差し出すと、小鳥のように素早くパクついてきた。
「何か北川ナチュラルに”あーん”で食べてるけど……」
 言った瞬間、豪快な音を立ててむせた。

「うっ、ゲホッ−−」
「ちょ!大丈夫か?そんなに慌てるなよ」
「ゲホッ……油断した、家で母さんとかがよくやるから……つい」
「あー落ち着けひとまず水でも飲んで」
 手渡した水を一気に飲み干すと深く深呼吸をした後、苦しさに涙目になった北川が小さく”ありがと”と呟いた。

「さっきから俺だけなんか恥ずかしい……」
「そんなことねーだろ」
「こんな公衆の面前であ〜んとか……いっそ大橋も同じ目にあえばいいんだ」
「は?」
「はい!大橋!口をあけたまえ!」

 スプーンに乗った生クリームとフルーツ。
 さあ、お前も照れろ!と言わんばかりの表情の北川に微笑ましくなりながら俺はためらいも無く口に運んだ。

「んー相変わらず美味しいな」
 ご馳走様、と平然としている俺を見て目の前で項垂れる北川。
「残念だな北川、俺は小さい妹がいてこんなの日常茶飯事なんだ」

「クソッ…いちいち大橋がイケメンで腹立つ」

 でもそんなとこも好きなんだけどね!
 俺にだけ聞こえるような小さな声でそうはにかみながら……

「あ、大橋が照れた!」

「うっさい、今のは反則だろ///」


 まだ耳に残る甘い言葉の余韻に、今日食べたパフェが、今まで食べた中で一番甘く感じた。




【END】
※次ページあとがき。
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