short story

□溺愛ポーカーフェイス
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『罰ゲームでもいいから俺と付き合って!』


 クラスメートがふざけて決めた罰ゲーム。
 それを見破っていた北川からの告白。

 そして、なぜか悪い気はしないと思ってしまった俺の心。それ所か……



「あ、大崎そこ間違ってる」
「え?どこ」
「ここのスペル、これrじゃなくて……」
 横に座っていた北川がこちらを覗き込んでノートを指差したときに、お互いの頭が軽くぶつかった。
 俺といる時だけは前髪をピンで留めるようになって、眼鏡はあるものの露わになっている表情にまだ慣れずにドキッとする……
「あ、ごめん頭ぶつかっちゃった」
「い、いや…だ、大丈夫」

 あの罰ゲーム以来、俺は何かがおかしかった。あの時から北川の事を愛だの恋だの的に可愛いと思うようになったのは自覚している。
 現に今だってちょっと顔が近づいただけで、こんなにも動揺して……まるで初恋をしたガキのように北川の些細な変化や声、仕草に胸が高鳴る。

「って……キモいな俺」
「ん?なんか言った?」
「いや、何でもない」

 結局あの告白はひとまず保留ということになり、俺はこうして放課後に北川に勉強を教わっていたりする。
 北川も、あの時の事には触れずにこうして二人で過ごす放課後が少し楽しみだったり……

「そうだ北川、甘いもの好きか?」
「………」
 俺の言葉に明らかに機嫌を損ねたように唇を尖らせて頬を膨らませた北川。
「何その顔、嫌いなのか?」
「………嫌い、じゃない」
「え、じゃあ何で怒ってんの」
「だって……男の癖に甘いものが絶対好きそうって思われてると思ったら」
 唇を尖らせたまま、不貞腐れてる……かわいい−−じゃなくて!
「男だって甘いもの好きでもおかしくないだろ?俺だって好きだし」
 そう言った俺を呆然としながら以外そうにまじまじと見てくる。
「甘いもの……好きなの?」
「フツーに好きだろ、一番はシュークリームだな」
 でも甘いものは基本的に何でも好きだ。って言った瞬間、北川の呆然とした表情が急にへにゃ、と崩れた笑みを見せた。
「どうしたんだ急ににやけ出して−−」
「だって、大崎が甘いもの好きとか今まで知らなかったから……」



”新しく大橋の知らなかった事が知れて……嬉しい。”
 へへッと両手で頬を包みながら本当に嬉しそうに笑う。

 ああ、ダメだ。
 胸が落ち着かないっ……もう、これが答えだろ。
 これが恋じゃなかったらなんだって言うんだ!


「北川!」
「ふぇい!?」



 お前がすきだっ!
 だから、罰ゲームなんて関係なく、ずっと俺の傍にいてくれっ……


 その俺の言葉に、北川はまた呆然とした顔をした後、さっきよりももっと可愛く笑った。






【END】
※次ページおまけ。
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