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□阿呆
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「死 ん だ」



そんなオイラの絶望的な声が響いたのは、五月の半ばの事だった。








冒頭から突然死んで悪いけど、とりあえず死んだ。
何が死んだかっていうと、地学と生物と世界史・日本史と地理の点数が、だ。
その点数があまりに無残すぎて、オイラは数十分間教室の机に突っ伏していた。


もう分かっただろうが、中間テストの結果だ。

今言ったやつらは全て赤点。数学とかは得意なのに、どうもオイラは暗記系が苦手らしい。

明後日に地獄の再テストをやることになってしまったのだ。


もう嫌だ。テスト終わったら即刻創作活動に励もうと思って意気込んでいたのにこの様だ。



一日勉強する時間はあるけど、なんだか一人ではやる気になれない。


かと言って勉強を頼む人といっても...、


...サソリの旦那は遠慮したいし。
以前、一度だけ勉強を見てもらったことがあるけど、あれはスパルタ過ぎてついていけない。うん。
もはやSMの世界だ。

そう言う意味では恐らく角都もそうだ。間違えたら心臓取られそう。
...それじゃあ勉強にならない。

イタチのヤローはこっちから願い下げだ。うん。

鬼鮫はー......生物以外無理そうだな。うん。


でも鬼鮫が一番妥当かな。



「...けど生物だけかぁ...うん...」



それでも納得いかなくて、あげかけた腰を椅子に戻す。


ちなみに、この再テスト、また赤点とったら地獄の復習をすると言っていた。


...なんかもう、それでもいいかな。
とか思ってしまう。


いやでも、復習なんてことになったらそれこそ創作活動の時間が削られてしまう。
そんなの真っ平ご免だ。

結局、誰に頼めばいいのだろうか。
思い切り頭を捻ってそんなことを考える。





待て。うん。

これは確かテスト勉強をする流れだったはずだ。

とどのつまり、勉強すればいいんじゃないか。
じゃあもう一人でいいや。

...うん。


最終的に一人でやるという答えにたどり着いて、ため息をつきながら立ち上がった。

これもう再テスト終わったよな。うん。


角都に勉強させられて死にかけているという近い未来に思いを馳せていると、視界の端に一人の男の姿が目に入った。


そいつはさっきまでのオイラと全く同じ体制をしていた。
数字は見えないが、手に持っている紙片には赤で何かが書いてある。
身長が高くて体格のいい感じの男で、銀髪をオールバックにしている、アホ面。

...オールバックの、アホ面。



「...おい、飛段?」



一言で言うと、飛段だった。

飛段は、オイラの声に気がつくと、ゆーーーーーーーっくりとした動作で顔を上げる。


その顔に生気という色は少しもなかった。



「!?ひ、飛段、顔が鬼鮫みたいだぞ...!!!」

「え、マジ?そんなに?げはぁはははぁ...」



駄目だこいつ。完全に壊れてやがる。

こいつ特有の特徴的な笑い方も今日は元気がない。
オイラはここまでこいつを追い詰めているものに予想がついて、聞いてみることにした。



「赤点...」

「っ!!!!!」



小声で。こいつにしか聞こえないくらいのボリュームで呟いたら、わかりやすく反応してくれた。

そしてドS心をくすぐられたオイラはさらに追い討ちをかける。



「再テスト...」

「...」



なんかだんだんがたがたと怯えてきてる。

トドメを指すかのように、今度は普通の声でポツリと言ってやった。



「地獄の復習」

「うあああああああああああああああああああああああああああっ」

「うるせぇ!!うん!」

「へぶしっ」



あんまりに大声で叫ぶので、粛清するべく頬を両側から思いっきり叩いてやった。
ぱぁん!っていい音がした。

未だに腫れてるけど、気にしない気にしない。

気にしないけど、思い切り叩いたから飛段はまた顔面を机に打ち付ける。


オイラはため息をついて、再び屍となった飛段に声をかけた。



「今回は何教科赤点取ったんだよ?うん?」



まぁ、毎回こいつは赤点とってるから。慣れてるからな。うん。
その度にこいつに教えてやってるんだった。主に数学と政経。
今思い出した。うん。


とまぁそんな具合に、少し教えれば大丈夫だろうと、軽い気持ちで声を掛けた。
そしたら飛段からも、軽い返事が返ってくる。



「ぜんぶ」



筈だった。





















「...はああああああああああああああ!?」













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