恋する動詞

□*追いかける*
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『カノ…聞いてる?』

「んー。」

いい加減イライラしてくる

彼はさっきから雑誌をベッドの上に転がって読んでいる

幸せだった日々はいつの間にか
トキメキすらない毎日になっていた

結婚したての夫婦から
子供がいるから仕方なく一緒にいる夫婦まで
一気に下がってしまったよ…

「はははっ」

何雑誌見て笑ってんの…?

イライライライライライライライラ

このベッドにいる男はこれでも私の彼氏
私達はまだ付き合って一年も経っていない

なのにどうして何がこうなったかは知らないが
少しは彼女の言うことを聞いてくれてもいいと思う

キドが買い物手伝えって言ってるのに…

『はぁ…』

カノに分かるくらいにため息を吐く

働かない夫を持ったような気分だ

私のことなんか気にも止めない男につくづく呆れる

『カノ』

「ん」

『カノ…!』

「ん〜」

『カノってば!』

「なーに」

私が声を上げても雑誌から目を離さない

そうかそうか、お前は彼女より雑誌が大事か

『……もういい』

睨むように視線を送れば
チラリと目線を此方にやっと向けた

「なんで怒ってるの?」

『…………』

白々しく笑顔で聞いてくるこいつに
私は我慢の限界だった

無言で背を向け

バタンッ

と大きな音をたてて扉を閉めた

ほんっとうに最低だ。人の話なんか全然聞いてない

最近いつも、いつもそうだ
私が話しかけても生返事しか返してこないで
他の人が話しかけたらちゃんと話すのに

分かってる、分かってるよ

カノがどうしてそんなことするのか

それを考えたら
視界が段々滲んできて

思わず扉の前でしゃがみこんだ

視界を腕で溢れてこないように抑え込む

こんなことで泣いたら駄目だって分かってても
勝手に私の服を濡らしていく

いけない、こんなところで泣いてるの
誰かに見られたらまた何か言われてしまう

『っ』

グッと目元を強く擦れば
ポンッと頭に置かれる手

『…?』

その手に押さえ付けられて顔があげられない

頭を強く振ろうとすれば

『っ…』

その手は優しく私の頭を撫でる
あまりに優しく撫でるから止まった涙が再び溢れた

何度か撫でた後にポンッとまた頭に軽く手が置かれる

顔をあげれば私と同じようにしゃがんで
困ったように微笑む

「……二人で行くか」

『うん…っ』

キドがいた

よし…と立ち上がったキドは先に玄関の方へと行ってしまう

私は慌ててその背中を



追いかけた
 

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