恋する動詞

□*望む*
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ふらり、ふらり、と行く宛なくある歩き続ける

時刻は八時過ぎ

先程ホテルに予約をとったが、空いていてよかった

幸いお金はあるので助かった

『…………』

風が、気持ちいい
昼は物凄い暑かったが、夜になるとそうでもない

「ねえ君。今一人?」

『……………』

チャラチャラとした男に、声をかけられたが無視して歩く

「ねぇってば」

しつこい、
捕まれた腕をパシッと振り払った

「チッ」

そうすれば着いてきた足音は去っていく

『はぁ……』

ため息しか出てこない

一瞬期待してしまった…
探しに来てくれたのかと思ってしまった…

あーあ、馬鹿らしい

あんなこと言われても期待してる自分が

嫌だ

つくづく自分を馬鹿だと思う

『…………』

一人になりたい

今は、喋る人全てが邪魔だ

独りになりたい

そう思ったら自分の足は、人気のない道を進んで行く

勿論危険は承知だが
襲われたとしても、私なら大丈夫だろう

ほんと女の子らしくない

ため息が勝手に漏れる

そんな自分を鼻で笑う

一人で芝居してる気分だ

『………!』

月光によってできた大きな影に吃驚して
フードを外して見上げる

なんだ、あれは廃墟…?
それにしても大きい…

近付くと廃墟にしては綺麗
壊れている壁に背を付けてしゃがみこむ

疲れた、足が痛い

時間が大分経っている

『…………きれい』

空を見上げる

星が輝いていた、月が輝いていた

視界がどんどん霞んでいく

『……ふ…ぅ……っく…ぅ』

涙が溢れる

寂しい、

苦しい、

悲しい、

訳の分からない感情が溢れて止まらなかった

誰もいないから大丈夫

そう思ったら今まで溜めていた分も
溢れだした

『ふ…っ……ぅ…っ』

独りで寂しいはずなのに、どうしようもなく今は

独りが安心した


このまま独りでいたい、そう


望んだ

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