恋する動詞

□*願う*
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はぁ……と着信履歴を見て、ため息を吐きだす

肩にかけたタオルで雑に髪を拭きながら、携帯の画面を見つめる

気づかなかった

携帯をテーブルに置こうとしたその時

ブーッブーッブーッブーッ…

と、手の中で振動する携帯

画面に映し出された名前は

《セト》

その名前に出たい気持ちになるが、ぐっと堪えて

『ふぅー…』

テーブルにソッと置いた

黙って出ていったから心配、してるのかも

だが、戻る気は更々ない
冗談じゃない、独りでいたいんだ
だから、早く電話を切って…

未だに振動し続ける携帯には、セトの名前が映し続けられる

…今回はしつこいな

先程買った飲み物を冷蔵庫から出して
、テーブルに置き
カーテンを開けて窓を開け、部屋の電気を消す

月明かりが窓から入ってくる

空には雲一つ、ない

テーブルに頬ずえをついて、その光景をボーッと見る

テーブルに置かれたピンク色をした
飲み物をごくり、と一口飲む
それはひんやりと喉を潤していく

『はぁー…』

疲れた、なんだか凄い疲れた

なんで私があいつなんかの為に、ここまで

苦しまなきゃいけないんだ

こんなことなら、好きになるんじゃなかった
何て後悔しても無駄、か…

今ではあまり思い出せない

楽しそうに私を呼ぶ声も、

真剣な瞳も、

優しい瞳も、

私だけに見せる笑顔も、

涙と一緒に流れ落ちてしまったのだろうか
ギュッと目を固く瞑っても、浮かぶのはあの、

冷たい瞳、

あの

冷たい声、

あの、

冷たい

「迷惑だから」

…言葉だけ

思い出す度に涙が出そうになる

馬鹿みたいだ、こんなの
私だけが、苦しんでる
私ばっかりが、好きみたいだ

震える携帯に映される

《カノ》

その名前を私は待ってた

いつだって私の傍にいてくれた彼は
もう、いない…

涙が、止まらない

こんなに苦しいなんて、聞いてない
こんなに好きだったなんて、知らない
後悔しても、しきれない

もっと優しくしとけばよかった、とか
もっと素直になればよかった、とか
そんなことばかり浮かんで…

そのことが原因じゃないかもしれない
でも、考えずにはいられなかった

分かってる、分かってる
分かってる、分かってるから…

もう少し、もう少しだけ

カノのことを考えさせて

分かってるよ、今日でもうサヨナラするから

分かってるよ、こんなの迷惑だって

だから、もうサヨナラするよ

だから、お願い

あと少し、あとちょっと、今日が終わるまで

好きでいさせて…

明日からはもう、見ないから
明日からは、迷惑かけないから
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