恋する動詞

□*惚れる*
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「名無しさん」

あれから数時間。
ブランコからベンチに移動…しただけ

先程からアジトに行こう、というセトを
私がずっとやだ、と駄々をこねている状況である

『う、うん…。でも…』

行かなきゃいけないのは分かってる
分かってるけど…

「大丈夫。なんかあったら俺がなんとかするっす」

ニカッと笑った顔が眩しいよ…

『それは心強いんだけどね』

…こんな顔じゃ……ちょっと

大丈夫、そこまで酷くないっすよ

なんて言ってくれるが、そこまで、
あくまで、そこまで、らしい

別に酷い顔を見られるのは、別にいい
けど、泣いたっていうのを知られたくない

特にカノには

『セト…、どうすれば…』

はぁー…と思わずため息が漏れる

「んー…やっぱり名無しさんが………え!?」

『?』

セトは途中で言葉を切ると、これまでにないくらい目を見開いた
何事かと私もセトの視線の先を目で追うと

『どうした……ってえぇ!?』

「なんでマリーがここに!?」

沈んだ顔で、先程私達がいたブランコにマリーが座っていた

『え……?」

どうして、一人で
どうして、そんな顔してるの…?

『…マリー!マリー!』

そんな姿を見てられず
思わずマリーの名前を叫ぶように言えば

「え…、名無しさん…?名無しさん!!」

顔をバッと上げキョロキョロと辺りを見回し

『マリー!』

私の姿を見つけると、涙をポロポロと溢しながら

「名無しさん…っ!」

必死に走って、私にギュッ、と抱きついた

名無しさん!名無しさん…っ!と、ずっと私の名前を呼び続けて

ぎゅう、っと抱きしめ返す

マリーの涙は、私の服を濡らしていく

どうして…、そんなに泣いているの?

マリーの顔を見ようと体を離せば
さっきよりも強く抱きついて
やだやだやだ…!と言って離してくれない

困って隣にいるセトを見れば

『………、』

彼も全く分からないようであわあわしていた
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