その他 短編集
□届け君への想い
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「…***」
『紅覇様?』
いつもとは違う声色に不思議になって***は首を傾げる。
「様付けはやめてって言ったじゃん。お前は僕の幼馴染みでしょぉ?」
私は一瞬だけ驚いた顔をした。
幼馴染みというのは本当だったが、皇子と従者。
身分の差は明らかだった。
『…私は武術の腕をかわれて紅覇様の従者をさせていただいてます。主を呼び捨てなどできるはずがございません』
昔のことなど忘れて下さいと***は言った。
「じゃあ〜聞くけど、***は僕との思い出忘れたぁ?」
『…っ』
答えることのできない彼女を紅覇はねぇと真っ直ぐに見つめる。
『…ません』
震える声になりながらも
『忘れたことなんて一度もありません…っ…』
***はそう答えた。
「***の綺麗な顔を見せて?」
燃えるような赤が視界いっぱいに広がる。
『へっ?』
紅覇は涙を優しく指で掬(すく)った。
『あ、あの…』
「だからぁ、早く僕の気持ちに気づいてってば」
もうと怒って紅覇は頬を膨らませた。
『え?…え!?』
止まっていた涙が再び***の肌を流れた。
「僕はさ、昔から***のこと好きだよ」
*終わり*
(私も大好きです)
(そ、そんなの知ってるしぃ…)
(ふふっ。そうですよね)
今日からまた一段と忙しい日々が始まりそうです。