その他 短編集
□思い出にさよならを
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―ええんよ。例えそれで命を失ったとしても、自分が選んだんや。後悔は無いよ?―
思い出にさよならを
『…獅郎…冬獅郎!』
「あ、はい。なんすか隊長」
『なんすか隊長はないやろ!最近なんやよー考えとるから心配したってんに』
この人は***。
俺が副隊長だった時の十番隊の隊長だった。
漆黒の髪に色白で美人だが生粋の関西人だ。
「隊長達、何やってるんですか?」
そこに現れたのは十番隊第四席の松本だった。
『乱菊ちゃんやんか!ちょい聞いてくれる?冬獅郎がなぁ』
「ばっか!言うな」
「日番谷副隊長〜、もったいぶってないで教えて下さいよ」
「言うか!」
***は側でうんうんと頷いていた。
そして彼女は急に俺達の前からいなくなった。
「…今の!」
『行くで。どうやらうちらんとこの隊舎から近いようやからな』
二人は十番隊の隊舎から霊圧の感じる地点へ急いだ。
他の隊の者はまだ誰も来ている様子はない。
「相賀!?」
日番谷が驚いたのも無理はない。
相賀とは十番隊第三席の男のものだった。
彼の霊圧だと気付かなかったのはあまりにも感じが変わっていたから。
「う゛ぉぉぉッ」
『冬獅郎!刀構えんかい!ちっ…』
どすと鈍い音が鼓膜に響いた。
「…え?」
体がまったく動かなかった。
動かなかった訳ではない、動けなかったのだ。
『相賀…っ…仲間を背くようなことだけは…絶対したらあかんよ』
***は始解さえせずに相賀の魂を浄化させた。
次に聞こえたのはどさりと何かが倒れる音。
「隊…ちょ…う」
日番谷は壊れたものを扱うように優しくそれを拾い自分の方へと寄せた。
『私が…したくて…っ…。だから…後は任せ』
“後は任せたで”
そう言って***は瞼を閉じた。
「隊長?魘されてたみたいですけど大丈夫ですか?」
「あぁ、問題ねぇ」
ばあちゃんに顔見せに行こうかな。
終わり
→あとがき。