その他 短編集
□微笑みながら
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「***何か勘違いしてない?」
『...へ?』
ずっとこの関係は変わらないものだと思ってた。
微笑みながら
薄暗い建物の中。
『...』
気まずいなぁ...。
みんなは任務で出かけていてこの場所にはシャルナークと私しかいない。
蜘蛛の旅団に新入りで私が入った時からなんだか距離を感じていた。
あぁ私はずがすがと彼の領域に入っちゃいけないんだって
任務で一緒になったことはあったけど、その時は2人だけでは無かった。
『...何か飲み物ついでこようか?
』
「いらないよ、ありがとう」
読んでいた本に視線を落としたままシャルナークは返事をした。
マチちゃんに相談した時は、あいつはいつもあんな感じだと思うけど?だから心配しなくていいってと励まされた。
心配しなくていい?
なんで心配しなくていいんだろ?
私何か不安なの?
『...ねぇ、シャルナーク。私不安そうに見える?』
いつもと違う声色にシャルナークは本から目線を外して***の方を見た。
「...うーん」
「いつもはそんなことないんだけど、僕と話してる時は特にね」
言葉が出なくて、左手で自分の口を覆った。
その代わりに出てきたのは涙だった。
「***⁉︎」
『ごめんね...ごめんっ』
「***が謝ることじゃないよ、なんとなく嫌われてるかなって思ってたしね」
『...え?そんなことないよ?』
シャルナークはぽかんと口を開ける。
「え?違ってた?」
『私は...嫌いじゃない...シャルナークのこと...でも...シャルナークは私のこと嫌い....なんでしょう?』
もうやだ...。
嫌われてるって分かってるのに、言葉に出して言うのってこんなに辛いんだ。
「***...何か勘違いしてない?」
そして、はぁ〜もしかして慎重になり過ぎた?と呟いた。
『...へ?』
ぽんぽんと私の頭に置かれたのは彼の手で。
「嫌いなんかじゃない。ただ、***のことを大切にしたかっただけだから」
『え?...えっ?』
何が何かわからなくなっている***にシャルナークは優しく微笑んだ。
「嫌いなんて言えないよ」
涙を掬うようにそっと彼女の頬に口づけをした。
*終わり*