小説A

□惰性
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最近、前よりC太が僕に対して親しげになった。今日あったどうでもいいことを会話の種にする度、そう感じる。嫌悪だとかそんなものは抱かない。居心地が悪いとも思わない。ただ少し、怖いと思う。
今まで続いてきて、そしてこれからも続いていくだろうなにかが壊れるとき。なんとなく、恐怖を覚える。
分かっている。C太が僕の側にいるのが、純粋な友情の類ではないことは。どことなく屈折したなにか。そのためだけではなくて、でもそれが多くを占めている。そんな中途半端で楽な関係が壊れるのかと思うと、なんとなくもやもやした気持ちになった。変えたいとは思う。このままではいけないとぼんやりと思う。でも、怖い。
だから今のままでいたいと思った。変わるのが嫌だから。僕にとってのC太が、C太にとっての僕が。半端に孤独で、都合のいいときだけC太を利用することを楽だと思っている。きっと僕はそうだったのだ。そしてそれは酷いことだ。最低だ。罪悪を覚えながらもそれを維持する僕は、最低だ。
だからどことなくそっけなく接してしまうのだと思った。C太が近寄って、僕は離れる。これなら二人の距離感は変わらないから。楽な今までをこれからにしたいから。きっと僕は一生変われないのだろう。臆病だから。何だかんだ言っても庇ってくれるC太を利用することが楽だから。それをすることがC太にとってもマイナスではないと思っているから。これはある種の契約で、お互いになにかを提供しあって、それを隠して過ごしているのだと。
そんな言い訳を考えてばかりいる僕は、やっぱり最低なのだ。

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