小説

□俺は見ていた。
1ページ/2ページ

俺の居る意味。誰かの夢。誰かの命。
そんなくだらない物を集めて作られてしまったこの体は、終わった命を蒸し返す、はた迷惑な機械らしい。

ぼんやりと残っている、この記憶。
確か、誰かが……『また会いたい』と呟いていたんだ。

ハリボテの街で行われたらしい、しょうもない終末実験は、昨日時点で予想通りグダグダすぎて、その時点でもう、諦めたほうが良かったんだ。
そんなくだらない実験の後釜は、なんの罪もないあの二人。
大きい街の小さな隙間で、夏の水色にどっぷり浸かった、ありもしない幻想を夢見ていた。

突然のトラックの轟音と共に、小さな体はまた飛び散った。また、期待ハズレだった。そもそも、こんな世界で期待なんてものをするほうが間違っているのかもしれない。
泣き叫んでいる霧野先輩を、ただ、反対車線で見ていた。
ユラリ、と空気が揺らめいて、この空虚な世界が巻き戻ろうとしているのを感じる。
ああ、この歪な夢は、終わらない。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ