小説

□月が綺麗ですね。
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「狩屋、帰ろう」

「……まあいいですよ。ところで今何時くらいですか?」

「あー、んーと……7時ちょうど、くらいだな」

「そうですか分かりました。
じゃあ行きましょうか」

「そうだな。
……なあ狩屋、夏ってすごいな。
もう7時なのに、まだ明るい。綺麗な夕焼けだ」

「そうですね。
ほんとに夕陽ってまぶしいですよねー……」

「狩屋、……月が綺麗ですね」

「……はい?
――ああ、そういうことですか。
駄目ですね、カスリもしないで赤点。
補習ですね」

「カスリもしないってお前……!
これでも頑張ったんだぞ!?」

「これが真冬だったらどうするんですか!普通にはいそうですねーだから?で流れますよ!
俺が知ってたからいいものの、知らない人にとっては はあ?で終わりですよ!?直前に話題をふるなり何なりしないとわかんないですよ……。
バカですかアンタは……」

「むう……。かっこつかないなあ」

「だっせー、バーカバーカ。
……もう一回くらいなら、やらせてあげなくもないですけど」

「はは、お前らしいな。
……狩屋、知ってるか?
夏目漱石って、英語の時間に『I love you』を、本人いわく日本人らしく『月が綺麗ですね』って訳したんだってさ」

「へー、そーなんですか」

「狩屋。……月が、綺麗ですね」

「……あーもうなんでアンタはそんな無駄にかっこいいんですか腹立つなあ!先輩のバーカ!」

「ええええ……」

「ニヤけんなバーカ!俺も死んでもいいからっ!」

「……?」

「だから、俺も死んでもいいって言ってんですよ!
わかんないんですか!?」

「―――っ!ほんっとお前かわいいなあもうっ!」


「あーもううるさいです!黙ってください!」

「はいはい。
……ほんとに、月が綺麗だな」


「……。そう、ですね」



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