小説

□キスの合間に漏れた吐息で
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ここはゴッドエデン。

革命の風が去っていったこの島は、もう冬を迎えていた。

地面に落ちた枯れ葉を踏んだ、乾いた音が耳に届いて、僕は顔をそちらに向けた。

「――君は相変わらず暇だね、白竜」
「――ああ、その通りだ」

このやり取りを、もう何度繰り返しただろうか。数えきれないほど、白竜はもうこの島を訪ねている。
別にこなくてもいいよと言っているのに、俺は暇だからな、と言って、こうして何度もここに来るのだ。

ほうっと吐いた息が、白くなる。
思わず、寒いな、とこぼした。
そしてふと、僕は本当に寒いなんて感情を感じているのだろうか、なんて考える。
僕は、白竜と同じ時を過ごしてはいないから。
こんなふうに、人間らしい感情を感じているのだろうか。
そんなフリをしているだけじゃないのか。

「シュウ、知っているか?
近々、サッカーの世界大会が行われるらしい。
しかも今回は、女子も出場できるそうだ。」
「世界大会……ねえ……。
きみならいけるさ」
「シュウは、出ないのか?」
「……僕はいいよ。そんな柄じゃない」
それに、人ですらない。
未だにこの島に縛られているのに。
そんなことを思う度に、満たされない何かを感じる。
からっぽの心が、なぜか疼く。

「……ねえ白竜、
僕はさ、寒いんだ」

そう言って、白竜に口付けた。

僕は、さむいんだ。
きみにしか治せないんだ。
だから、


(キスの合間に漏れた吐息で、)
(僕を、あっためて。)

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