小説

□歪んでしまった
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「……大好きだよ、狩屋」
「……俺も、です。先輩」
こう言って、狩屋にキスをする。
一瞬だけびくりと跳ねた肩は、俺への恐怖を感じさせるには充分で、少しの苛立ちを覚えるのと共に、もっと壊したくなる。
唇を離して、好きだ、大好きだ、と囁けば、狩屋は俺の顔を見つめるだけで何も言わない。
「好きだよ狩屋。愛してる」
こう言うのと同時に、狩屋の細い首筋に手を伸ばした。
手に力を込めると、狩屋の表情が徐々に歪んでいく。
「……せん、ぱ……、くる、し」
そんな狩屋を見ていると愛しくて、もっと、もっともっと、俺の手で壊してしまいたくなる。
もう戻れないことなんて、痛いほど思い知っていた。
手の力を緩めると、かはっ、と痛々しい息が漏れた。
締められて後がついた狩屋の喉にそっと触れると、再び肩がびくりと跳ねた。
「……狩屋、かりや」
目の前で怯えた瞳を見せている、俺の可愛い後輩。
狩屋。

大好きだよ、ともう一度告げた俺の腕は、再び華奢な首筋に向かっているのだった。

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