小説

□ネットワークの進歩は必ずしもいい影響をもたらしてはくれない。
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間違えて広告をクリックしてしまった。

少し調べたいことがあって、珍しくスマートフォンのインターネットを使っていた時だ。基本的にメールや電話等の事務的連絡にしか使わないが、今日は珍しく携帯が活躍していた。
これなら携帯も悪くないな、と快く調べごとをしていた、のに。

私が間違えてクリックした広告は、無料でインストールできてなおかつメールや通話ができるお手軽アプリの物だった。いわゆる『ライン』だ。
最近クラスの女子たちがIDだの既読だのはしゃいでいるのを聞く。
無論、私の携帯には入っていない。
入っていたとしても、する相手なんていないのだけど。
元々仕事やらで忙しいから、そういうのを交換する暇もないし、そもそもあったら友達だってもっとたくさんできていたはずだ。
そうやって携帯上だけのやりとりできゃあきゃあ騒いでいる子たちは、不安に思わないのだろうか。
自分とそうして話している間に、別の子と自分の陰口を言っているんじゃないかだとか、私とこうして普通に話すより、ラインでネット上だけの友人と話しているほうが面白いんじゃないのか、とか。
僻んでいるだけかもしれないけれど、少なくとも私はそう思ってしまうだろう。
ツイッターとかいうものだって最近流行っているけれど、やっぱり私は。
たとえばカノさんがツイッターをやっていたとしよう。そして私がそれを見つけて、ふと見る。
ツイッター上は女キャラだった、とか、傍目で見たら笑えるかもしれない。
でも現実のカノさんを知っている私としては、――やっぱりこういうのに入れ込んでるんだな私といるより楽しいんだろうな、とか、そんな事ばかり思ってしまって駄目かもしれない。
それが例えば団長さんでもセトさんでもマリーちゃんでも……。
自分が知らない場面が顕著に表れているだけで、ああ自分よりこっちのほうが面白いのかなんて思ってしまう私は卑劣なんだろうか?
まるで自分だけ置いていかれているような、そんな虚無感を味わうのは。
まあ私にはそんな友人はいないから、なんとも言えないけれど。
あとであのバカ兄にでも聞いてみようか。
そういえば、私も事務所に勧められたことがある。ツイッターをやってみないか、とか。結局は断ったのだが。
私は特定の誰かと仲良くするつもりもないし、そもそもそんなことは出来ない。だからそのせいで誰かを悲しませることはないと信じたいのだけど。
ただどうしても億劫で面倒で気が乗らなくて、先程考えていたことやらもあって敬遠しがちだった。
だから私は、そういうものから切り離された、少しばかり非現実的なあの人たちに会えて本当によかったと思っている。
そういうしがらみから全部解放してくれそうな。たとえ友人が居なかろうがあたりめとおしるこのアイドルだろうが、メカクシ団の人たちが私の支えになってくれていることは――

そう、はっきりと断言できる。

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