Book 【新選組】
□時わたり Y
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知らず知らずのうちにキョロキョロとしてしまう気持ちを引き締め、沖田隊に追いつこうと足を速める原田について行く。
右も左もわからない京の街ではぐれたりしては大変だ。
足早に歩く隊士たちについて歩きながら、光は彼らとは歩き方から違うことに気付いた。
急ぎ足で歩いているはずの隊士たちに、女の光が難なくついていける。
現代人とは手足の長さも違うし、フォームの違いみたいなものもあるかもしれない。
息も乱さずに余裕の表情で歩く光の顔を見て、原田は驚いたような、それでいて安心したような顔をすると、隊の先頭へと戻って行った。
しばらく歩くと、
「組長、ここです。」
前を行く隊士たちがとある一軒の商家の前で足を止めた。原田が無言で頷く。
すでに沖田隊がそれとなく商家の周りを取り囲んでいた。
原田がその沖田の姿を見つけて彼のもとへとかけよった。
「遅かったですね、左之さん」
「悪ぃ、悪ぃ」
沖田の言葉に、そう短く答えて原田は首筋をカリカリとかいた。
「どうだ、中の様子は?」
二人は少しの間話し合い、やがて二手に分かれた沖田と原田はそれぞれに次々と指示を出し始めた。
その指示に従って隊士たちがバラバラと散っていくなか、光は何をどうすればいいのか皆目わからず、往来の真ん中で立ち尽くしていた。
「おい、光!そんなとこに突っ立ってねぇで、早くこっちにこいよ!」
「あ、は、はいっ!」
慌てて原田のもとにかけよる。
「光、わかってるな?」
原田が光の腰に差した刀を見て言った。
「ここがお前の正念場だぜ?腹据えてかかれよ!」
「・・・・・」
「返事は!」
俯いて何も言えない光の頭に原田が拳骨を落とした。
「はい・・・。」
光がどうにか返事を返したそのとき・・・。