Book 【新選組】

□時わたり Y
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「まずい、左之さん!気付かれた!」
「チッ!!」

沖田の声に原田が舌打ちをして、声のした方にかけだす。

「光も来い!半分はオレと総司に続け。残りの半分、ここを任せた!!」
「はい!」

そう言われて光はわけもわからず原田について走った。

「左之さん!あそこの露地に追い込みましょう。私たちが待ち伏せます。左之さんはあちらから追い詰めてください!」
「あいよ!」

取り残されそうになった光を沖田が呼び寄せた。

「篠崎はこっち、私と来なさい」

隊士たちは三々五々と散り、まるで事前に持ち場が決められていたかのようにてきぱきと動く。

「原田隊が見つけ次第、こっちに追い込んでくる。私たちはここで迎え討つ!」

そう言って沖田は腰の刀の柄に手をかけた。

「絶対にここを通すな!」

いつもの沖田とは違う、組長としての声があたりに響いた。
その沖田の怒鳴り声が終わるか終らないかのうちに原田たちの姿が見えはじめ、緊迫した空気が否応なしに立ち込める。

「来たね!土壇場でひるんだりしないように」

そう光に話しかける沖田の顔は、といえば楽しそうに笑っているようにさえ見える。

こんな時にさえ笑っていられる沖田が不思議だし、その神経がよくわからないとさえ思う。
だが、そんなことを思っている暇はなかった。

原田隊に追われた数人の男たちが、抜き身の刀を手に走ってくるのが見えた。
巧みに誘導され、追われる男たちが沖田隊の待ち伏せる道に差し掛かる。

いよいよ近づいてくるそのときを思い、光は恐怖に震える。

「何してる。抜きなさい!」

沖田はそう言った。
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