Book 【新選組】
□時わたり Y
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(ああ、それで・・・)
光には思い当たることがあった。
夜中にふと目を覚ますと沖田の姿がないことがあるのだ。
「原田さんも、その稽古に付き合ってたんですか?」
「いや、俺はちがうよ。まぁなんだ、飲んだ帰りによ、たまたま見かけたんだ」
島原からの帰りだなと光は心の中でちょっと笑った。
「あいつは、努力してるところを人に見せねぇからな。そうやって人知れず稽古してたんだろ。そういうやつだからよ。
いっつもニコニコして笑ってるけど、本当は自分にも人にも厳しいんだ。だから、お前にもつらく当たることもあると思う。
だけど、憎くてやってるわけじゃねぇとも思う。わかってやってくれよな」
「ええ。それはわかってます。つらいと思ったことは・・・、ないわけではないけれど・・・。でも」
光の偽らざる気持ちだった。
「私には身寄りもいないし、浪士組の人たちが父や母であり友人であり、師であると思っています。
私を叱ってくれるのも、親や先生の大切な役目だと。ありがたいと思っていますよ」
「そうやってついて行こうとするから、総司も次々に求める。そしてお前がまたそれに食らいつく。
総司はうれしいと思うぜ、そうやって自分についてきてくれる人があるってことがな」
「そうでしょうか。私はいつも、沖田さんの足手まといにしかなってないような気がします。今日だって・・・」
「いやいや」
光の言葉を原田は途中で遮った。
「それでもさ。そういうもんなんだよ。あいつは、俺の知ってる限りのあいつは、つねに末っ子の立場だったからよ。俺はさ、お前があいつを慕ってついて行ってくれりゃ、あいつも変わるんじゃねぇかと思ってる。俺だけじゃないぜ?近藤さんも土方さんもそう思ってるよ。だからお前を総司につけたんだよ」
「え?だってそれは・・・?」