Book【新選組 spin off】

□太陽とひまわり
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この剣は大きく分けて三種の動きからできている。

まず最初は『誠之地』

地の神に捧げる剣だ。
これは直線的な動きを主とした、足元に広がる広大な大地をも切り裂くような力強い剣で、風鳴りの音をブン!とさせ、きりっとした動きが気持ちいい。

ときどき惣次郎の動きが止まり、一つ一つの動きを確認している。

(そう。そこで横に一閃。右足引いてさらに・・・。よし、それでいい。)

ぐいぐいと土地の奥底に向かっていくような意志の強さを感じさせるこの剣を、惣次郎は次第に完成させつつある。



そして二つ目は『誠之天』

これは天の神に捧げるもの。
水の流れのような、もしくは風のようなというべきか。

風に揺れる柳の枝のように、相手の攻撃をやんわりと受け流す。あくまでも相手に逆らわず相手に合わせる。

先ほどの剣が剛の剣だとすれば、こちらは柔の剣といえるかもしれない。

惣次郎は白刃を煌めかせ、この世の重力をものともせず軽く飛び上がる。

『武は舞に通ず』という言葉があるが、惣次郎のこの動きを見ているとそれを実感する。

惣次郎は、にこやかで誰にでも優しげな笑顔を向け物腰もやわらかいので、優男のように思われがちだがこれがなかなかどうして・・・。
中身は、強情で一本気な男だ。そのせいか、どうもこの曲線の動きが美しい剣を苦手としているようだ。
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