Book 【新選組】

□時わたり Y
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一言で巡察といっても、やることはいろいろである。
無銭飲食の輩を捕まえることもあればスリを追いかけることもある。
けんかの仲裁もするし、押し借りを働く者を捕まえるようなことになれば刀を抜くことにもなりかねない。

今日の巡察は、新八率いる二番隊の代わりに沖田の一番隊と原田が率いる十番隊だ。
中庭で集合している十番組の人たちと合流する。

「遅ぇぞ!」

いきなり原田に叱られて光の肩がビクリ!と上がった。

「すみません!」
「総司たちには先に出てもらった。オレ達も出るぞ!」


隊士たちが居並ぶ最後尾に原田とともにつき、光は原田にもう一度詫びた。
だがもう原田は気にしたふうもなく悠然と声を張り上げた。

「十番隊出るぞ!」
「はい!」

ザッザッザッ!と砂利を踏みしめる小気味いい音を立てて十番隊が屯所の門を出て行く。


相変わらず光は屯所から外に出る機会を与えられずにいた。
たまに出ると言えば剣の稽古に沖田に連れられて壬生寺に行くくらいだ。

外に出るには幹部の誰かを連れて行くようにと言われているし、かといって任務で忙しくしている幹部に付き添ってもらってまで行きたいところがあるわけでもなかった。

屯所に来客があればお茶を運び、台所を手伝い、稽古をする。
ほぼそれの繰り返しで日々が過ぎていく。

もとの時代に帰ることをあきらめたわけではないが、いつまでも引きずっていても仕方がない。今は巡察のことだけを考えよう。
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