Book【新選組 spin off】
□歯車
1ページ/6ページ
「近藤さん、ちょっといいか・・・」
土方が近藤局長の部屋の前で声をかけた。
「ああ、トシか。なんだ、改まって」
土方が近藤の部屋に身体を滑り込ます。
「誰かに茶でも持ってこさせるか」
自分から訪ねてきたわりには全く話し出そうとはしない土方を気遣って、近藤がそう言ったが
「いや、いい」
とそれを断って、ふぅ、と一つ息を吐いた。
「総司のことなんだがな・・・」
その数日前・・・・。
土方が何気なく沖田の部屋を訪ねると、今日も巡察から帰った沖田は隊服を脱ぎ捨て、布団を敷いてひっくりかえっていた。
実はこのところ、そんな日が続いている。
夕方になると怠そうにしているし、食欲もないようだ。身体も痩せてきたように見える。
それでも、一番隊の隊長としてその役目を放り出すわけにはいかない、と気力で立ち上がっているようにも見えた。
「お前、ここんとこずっとそんな調子か?」
「・・・・、ええ。まぁ・・・」
いつもその言葉でごまかしてきた沖田が、珍しく『大丈夫ですよ』と言わなかった。
「そうか・・・」
土方が腕を組んで考え込む。この男のいつもの癖だった。
沖田はいつ任を解かれるのかと、それだけを恐れていた。
そしてその日がそう遠くないであろうことも、うすうす気づいていた。