Book【新選組 spin off】
□過去の清算
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長巻といって、柄の短い薙刀のようなものが上手で、新撰組の道場で、これを振り回して暴れているのを見たことがあります。
この山崎の相手には播州明石の浪人で、大変近藤の気に入りだった斉藤一がよく立ち向かっていました。
(八木為三郎老人壬生ばなしより)
この一文を読んで、考え付いたお話。
でも山崎さんと斎藤さんの組み合わせは、やはり固いですね・・(^^ゞ
「はっ!・・・・・やぁっ!!・・・」
まだ夜も明けきらぬこの時間、山崎 烝は薄暗い中庭で一人長巻を手に型を取っていた。
もうどれくらいそうしているのか、山崎の息は上がり肩が激しく上下している。
だが、息の乱れはその稽古の為だけではなさそうだ。
何か心の中で納得いかない、くすぶった思いがある。そんな気がしていた。
時折り湧き起こる、なぜだかわからない怒りにも似た焦燥感を押さえられず、山崎は早々に布団から抜け出してここに来たのだった。
彼がそんなとらえようのない気持ちを振り払おうと再び長巻を構えた時、背後でザッ、と砂利を踏みしめる音がした。
振り向きざま長巻を構えた山崎が見たのは
「失礼」
と、言葉の割には大して悪びれたふうには見えない斎藤 一改め、山口二郎の姿だった。
「こちらこそ失礼いたしました」
そう言って山崎は構えを解いて自分のわきに長巻を立て、軽く会釈を送った。
「斎藤さん、どうなさったのです?こんな時間に」
「斎藤ではない。山口だ。それに、こんな時間はお互い様だろう」
そう言いながら山口は山崎の前に立った。
「失礼いたしました」
再び頭を下げる山崎に、気にすることはない、と山口は言う。