短編

□夕暮れ桜
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用具倉庫で今日の委員会をしていたら、あいている扉からふわりと暖かな風が舞い込んだ。


「あ……」
「ん?どうした、平太」



何やら俺の頭に手を伸ばそうとしている平太に手が届くように少しかがんでやる。


「これ……」


開いた平太の小さな手にのっていたのは一枚の花びら。
何をしているのか気になったのだろう。
しんべヱと喜三太も近くに寄って来る。


「なぁに?どうしたの?」
「さっきこれが入ってきたの……」
「桜?」
「うん……」


桜か……。


思わず小さなため息をついた。
天気が良かったら今日の休みは用具委員会みんなでお花見の予定だったのだ。
しかし、食満先輩にお使いが入ってしまい、中止になってしまった。


「お花見行きたかったなぁ……」
「うん。ナメさんも楽しみにしてたんだよ」
「お団子食べたかったぁ」


みるみるうちに眉が下がり、元気がなくなっていく一年に声をかける。


「急にお使いが入っちまったんだからしょうがねぇだろ?」
「でも行きたかったです……」
「そうだな。おれも行きたかった」
「富松せんぱいもですかぁ……?」


見上げてくる一年ボーズに頷く。


「おう。食満先輩も行きたかったと思う。
でも、お使いが入っちまったから仕方ねぇだろ?」
「じゃあ、富松せんぱい」
「なんだ?」
「委員会が終わったら一緒に遊んでください!」
「おう!いいぞ!じゃあ、委員会に戻るぞ!」
「「「はーい!」」」


なんとかいつもの明るさに戻った一年ボーズにほっとする。
もちろんおれも行きたかった。
きっと食満先輩だってそうだろう。


食満先輩がいない今日は大きな補修などは出来ない。
おれと一年生ボーズで出来るのは数の確認くらいだ。
あれからそれほど時間もかからずにおれの作業は終わった。
それは一年も同じだったようだ。


「せんぱーい、終わりましたぁ」
「おう」
「ぼくも終わりました……」
「しんべヱはどうだ?」
「はーい。終わりましたー」


いつもよりも早く終わったからまだ外は明るい。


「よし、じゃあ何して遊ぶ?」


そう問いかけると三人で顔を合わせて相談し始めた。
あれもこれもといろいろ出てくる遊びからどれにするか迷っているらしい。


「「「せんぱーい!決まりましたぁ!」」」
「よーし、何するんだ?」
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