短編
□初めての生活
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忍術学園、ここで立派な忍者になるんだ!
* * *
「……ちろ……、しゅ……ろ」
なんだよ、うるさいなぁ。
「守一郎!」
守一郎は自分を呼ぶ声に瞼を開けた。
どうせとーちゃんだろ、と思っていたら覗き込んでいたのは別の人物。
「やっと起きたか」
「三木ヱ門」
「とっとと支度しないと朝ご飯食いっぱぐれるぞ」
体を起こして三木ヱ門を見るとすでに制服姿。
「ほら、守一郎まずは顔を洗ってこい」
いつの間にか用意されていた桶と手ぬぐいを渡され、守一郎は欠伸をしながら部屋を出た。
えーっと、井戸はどっちだったっけ……。
案内されたもののこの広い忍術学園はなかなか覚えられない。
こっちだろう、と足を踏み出した瞬間に隣の四年い組の部屋の戸が開いた。
「喜八郎、いいから早く顔洗ってこい!」
驚いてその部屋を見ると、灰色の髪の毛がぐしゃぐしゃになっていて、
ぱっと見、妖怪にも見えそうな人物が出てきた。
「うわぁ!?」
「……あ、しゅいちろー」
眠そうな声で自分の名を呼んだその人物は髪の毛をかき分けた。
「……あ、喜八郎か」
「守一郎では無いか。おはよう。昨日は眠れたか?」
続いて顔をのぞかせたのは滝夜叉丸。
滝夜叉丸も三木ヱ門同様すっかり身支度を済ませている。
「おはよう。あのさ、井戸ってどっちだっけ?」
「守一郎井戸行くの?僕も行くから教えてあげるー」
そのままずるずると守一郎は井戸へ引っ張られる。
すでに食堂へ向かっている生徒を見て慌てて守一郎は井戸を使うも、喜八郎はのんびりしている。
「急がなくて大丈夫なのか?」
「だいじょーぶだいじょーぶ。いつものことだから」
そう言い、のんびりと井戸を使い終わった喜八郎にまたも引っ張られ部屋へ戻る。
部屋に入ると布団が畳まれている。
「あれ?」
「布団は私が畳んでおいた」
「あ、ありがとう」
「井戸の場所分かったか?」
「喜八郎に教えてもらった」
答えながら昨日着たばかりの制服に腕を通す。
制服なんて着たことないからなんだか照れ臭い。
頭巾まできっちり縛ったところで廊下から声がかけられた。
「おはよー」
「おはようございます、タカ丸さん」
返事をして廊下へ出る三木ヱ門に習って守一郎も続く。
「タカ丸さん、おはようございます」
「おはよう、守一郎」
「滝夜叉丸、喜八郎、食堂行くぞー」
「ほーい」
「全く、喜八郎の奴……」
「守一郎、行くぞ」
「おー」
これから、この四人と一緒に勉強して立派な忍者になるんだ。
「あ」
「どーしたのー?守一郎」
「あのさ」
振り返った四人に向かって守一郎はまだ言って無かった言葉を告げる。
「これから、よろしくお願いします!」
顔を見合わせた四人は、笑みをこぼした。
「「「「もちろん!」」」」