短編

□最後の言葉
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僕はほのかな光で目を覚ました。
だんだんと視界と思考がはっきりしてくる。
周りには寝息を立てている五人の同級生。


あぁ、そうか。
みんなで集まって年越ししたんだ。
……いや、その前に馬鹿騒ぎして寝ちゃったんだ。


忍術学園に入学してから六度目の年越し。


一度目は沢山の同級生と。
二度目はこれからに期待しながら。
三度目は学園に残るか残らないかの決断の中。
四度目は人数が大分減って。
五度目はもう前に進むしかないという決意で。


そして、六度目の今回は最後まで残った六人と。


プロ忍に一番近い六年生。
年が明けたらあっという間に卒業になる。


そしたらもうこんなに馬鹿みたいに騒げない。
もしかしたら敵になるかもしれない。
そんなことは理解している。
今の楽しさも、作られたものかもしれない。
それでも僕は、今年もよろしくね、って笑顔で言いたいんだ。


留三郎。
君には何度も助けられたよ。
おかげで僕の不運が不運じゃ無くなった。
僕を前向きにしてくれた。


留三郎だけじゃない。
ちゃっかり文次郎を枕にしている仙蔵と枕にされてる文次郎、長次と長次にひっついている小平太、みんなに沢山助けられた。
君たちがいなかったら僕は六年生になれていただろうか、なんて思ってしまう。
こんなに頼りないし、不運だけどそれでも、君たちは僕に頼ってくれる。
本当にありがとう。


みんなで笑っていられるのも今年を迎えたから後わずか。
その残りを大切に過ごそう。
大好きな君たち。
今までありがとう。
そして、これからもよろしくね。


あ、留三郎が起きたみたいだ。
もうすることが出来ないだろうその挨拶を笑顔でしようじゃないか。




おまけ(会話文)


「……ん、伊作?」
「おはよう留三郎」
「いつの間にか寝てたんだな」
「そうみたいだね」
「……伊作」
「なんだい?留三郎」
「今年もよろしくな」
「……………………」
「伊作?」
「……うん。此方こそよろしくね」
「おう!」
「……ありがとう留三郎」
「ん?なんか言ったか?」
「ううん。もうそろそろみんなを起こそうか」
「そうだな」
「もう起きてるぞ!今年もよろしくな!」
「……あけましておめでとう。今年もよろしく」
「今年もよろしくしてあげようではないか」
「おめでとう。よろしくな。あ、留三郎お前はいい」
「なんだと文次郎!俺だってお前とよろしくしなくていいぜ!」
「文次郎、留三郎。お前らは新年の挨拶すらまともにできんのか?」
「する!するから仙蔵!」
「その両手の焙烙火矢をしまえ!」

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