短編

□旅立つ六つの花
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思いを断ち切るように振り返らずに去る先輩や名残惜しそうに最後まで残る先輩。
変わらぬ笑顔だったり、涙をこらえていたり、と様々な表情だ。



……一つ上の先輩は個性が強い方ばかりだった。
燃える戦国作法に学園一忍者している熱血漢、人間ばなれした体力の持ち主、沈黙の生き字引、戦うのが大好きな武闘派に圧倒的不運。


正直、困る事も沢山あった。


だけど、


燃える戦国作法、作法委員長六年い組立花仙蔵先輩はクールな性格で、なんでも完璧にこなしていて、近寄りがたいと思いきや実はいたずら好きで、苦手なものもあって、なりよりも、努力する後輩には教えることを厭わない先輩だった。


学園一忍者している熱血漢、会計委員長六年い組潮江文次郎先輩は鍛錬馬鹿と言われるくらいに鍛錬してて、いつも隈があって、しかめっ面で、怒ると怖くて、でも、ちゃんとできたときには仏頂面ながらも褒めてくれる先輩だった。


人間ばなれした体力の持ち主、体育委員長六年ろ組七松小平太先輩は人並み外れた力で、いつも後輩を振り回して、ものを壊してばかりで、でも、いつも太陽のような笑顔で、何も考えてないように見えて実は後輩思いな先輩だった。


沈黙の生き字引、図書委員長六年ろ組中在家長次先輩は無口で、何を言っているのかわからないくらいに声が小さくて、威圧感もあって、図書室の規則に厳しくて、でも、困っているときには的確な助言をしてくれる先輩だった。


戦うのが大好きな武闘派、用具委員長六年は組食満留三郎先輩は好戦的で、後輩を巻き込んだり、巻き込まれ不運だったり、つり目で少し怖くみえたり、でも笑顔になるとそんなことはなくて、後輩に優しくて面倒見が良い先輩だった。


圧倒的不運、保健委員長六年は組善法寺伊作先輩は毎日のように不運にあい、敵味方関係なく手当てをして、忍者に向かないとまで言われ、かと思えば保健委員ならではの戦いをして、いざと言う時に本当に頼りになる先輩だった。


……一つ上の先輩は個性が強い方ばかりだった。
正直、困る事も沢山あった。
だけど、最強で、優しくて、尊敬している先輩だ。


いつも前に立っていて、ずっと越えられることができなかった大きい背中。
まだ越えることの出来ない大きい背中。
いつか追い越せる時がくるのだろうか。


この学園から姿を消したとしても心からは消えることが無いだろう。


ふと何かが頬を撫でた。
手を伸ばすとひやりとする。
それは、はらはらと目の前に落ちてくる。


「こんな時期に雪……?」


そう呟くと同時にふと、ある言葉が蘇った。


『雪の結晶は別の言い方で六花。六つの花と書く』


そう教えてくれたのはどの先輩だったか。
再び何かが頬を撫でた。
今度は冷たくなく、少し温かい。
触るまでも無くそれが何かわかった。
だって、これは自分から流れているものだから。


きっと先輩方はこれから別々の道へ進むのだろう。
だけど、全員が闇の中だけど、満開の花を咲かせるだろう。


……一つ上の先輩は個性が強い方ばかりだった。
正直、困る事も沢山あった。
だけど、最強で、優しくて、尊敬している先輩だ。


六つの花が枯れないことを祈ろう。


そして、いつか、また、会えたなら……。



* * *



「こんな時期に雪……?」


思わず顔を上げる。
ふと、ある言葉が蘇った。


『雪の結晶は別の言い方で六花。六つの花と書く』


これを誰に教えたのだったろう。


そう思いをはせるも、頭から追い出すように頭を振り前を向く。
忍術学園を卒業した身。
闇の世界へと進む身。


雪。六花。六つの花。


まさに今の自分たち。
闇の世界へと進む六つの花。


忍術学園にいる後輩も心配だが、一つ下の後輩がいる。
学園を任せられるほどに強くなった、自慢の後輩だ。


闇の世界では会わないように願おう。
それはどちらかの死をあらわす。


だから、平和な世で。
いつか、また、会えたなら……。

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