短編

□水遊び
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太陽が頭の上にある夏真っ盛り。


「あつい……」


三郎は少しでも涼しさを求め、木の木陰にいた。
何重にもつけている面のせいで余計に暑さを感じるのである。


「三郎?」


ふと三郎に声がかかる。
だらだらと過ごしていた三郎は面倒臭そうに目を向けた。


「……兵助」
「何をしてるんだ?こんなところで」
「あつい」
「……部屋の方が涼しくないか?」
「風が入ってこない」


確かにこの場所は少しだが風が吹いている。
暑さに弱い三郎が見つけ出した場所なのだろう。
くすりと笑い兵助は隣に腰を降ろす。


「何だ」
「いや?俺も涼もうかと思って」
「あつい」
「夏だからな」


面を外したらどうだ、との問いには馬鹿かと返される。


「それに今日はいつもより少ないぞ」
「あぁ、そうなのか」


だらだらとした会話を続けていると時々低学年特有の高めの声が聞こえてくることに気がつく。
暑いのに元気だな、と呟けば返ってきたのは思いがけない言葉。


「用具委員会と保健委員会は洗濯も兼ねてたらいに水を張っているらいしい」
「あぁ、あそこか……」


下級生に甘い委員長たちを思い浮かべて思わず苦笑する。
しかし、他の委員会もあげられていく。


「後は体育委員会。川に行くらしい」
「体育もか。……そういえばさっき雷蔵も行くって言ってたな」
「作法も見たぞ……」
「保健と用具は不運を考慮した結果なのか……?」


話しているうちに二人はあることに気がつく。


「……残っているの私たちと生物だけか?」
「……そうみたいだな。保健と用具も水で遊んでいるみたいだし」
「いっその事、あいつらも誘って川に行くか……?」
「今からか?」


全体的に一年生が多い面々が残っている。
今からでは川につくのもなんとも言えない時間になってしまう。
だよなぁ、と返しながら体を起こした三郎の耳に用具委員会でも保健委員会でも兵助でもない声が届いた。


「いたぞ!行けお前たち!」
「はいっ!」


なんだ、と振り返ったのは兵助も同じだ。
声の方向に顔を向けた途端、冷たい水がかかる。


「へ?」
「命中しました!」
「よーし、よくやった!」


驚きつつも目を向けると、そこには自分たちの後輩、生物委員会、それともう一人の同級生である勘右衛門の姿。


「八左ヱ門に勘右衛門?」
「よ!」
「今のはなんだ?」


その言葉にじゃじゃーんと竹で出来た何かを見せる。


「食満先輩が貸してくれた水鉄砲!」
「俺らと先輩たちしか残って無いからって貸してくれたんだぜ!」
「たらいにもおいで、って言ってくれたんですよ!」


その言葉に目を瞬かせる。
どうやら川に行かなくても水遊びができそうだ。
後で食満先輩にお礼を言わなくては、と思いつつ兵助と三郎は立ち上がった。
他の委員会が帰ってくるまでまだ時間はある。
だったらめいっぱい学園で水遊びを楽しもうじゃないか。


「伊助、三郎次、タカ丸さん、八左ヱ門に向かって発射!」
「おい!」
「勘右衛門、桶持ってこよう」
「いいね、それ!」
「よくねぇよ!?」
「行くよー、庄左ヱ門に彦四郎」
「はい!」
「あ、ここにあります」
「庄ちゃん冷静ね!?」

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