短編

□雪の日
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「あの、」
「ん?」
「先輩方は?」
「あぁ俺たちか?俺たちも雪合戦したぞ。
小平太と長次は息あってるし、仙蔵はちゃっかりろ組に混ざってるし、
文次郎はこけるし、伊作の不運に巻き込まれるし。
でも楽しかったな。
あ、これ内緒だぞ?」


しぃっと口元に指を立て、いたずらっぽく微笑んだ留三郎に四郎兵衛ははいっ!と返事をした。


「わかりました!」
「よし。
さてと……。俺はもう行くな」


縁側から立ちあがった留三郎に左近が声をかけた。


「食満先輩!」
「んー?」
「あの、ここは雪かきしていかないんですか?」


その言葉に再びいたずらっぽく微笑んだ留三郎は口を開いた。


「だって、お前たちまだ遊ぶだろ?」


だから今日は井戸の周りとか、厠とか、食堂とか、倉庫とかよく使うところだけ雪かき。
他の長屋もやってないぜ?


四人の頭を撫でながらそう言うとじゃあな、昼はちゃんと食堂行けよ!
と来た時と同じように片手をあげ留三郎は帰っていった。
留三郎が帰っていくのを見送り、真っ先に口を開いたのは久作だった。


「今度、ちゃんと食満先輩にお礼言わなきゃな」
「そうだな」
「ん」
「はい!」


最後のおにぎりを食べ終えた四郎兵衛は手をあげた。


「なんだよ」
「今度はぼく、おぉっきい雪だるまつくりたいんだなぁ!」


その言葉に三人は顔を見合わせ、笑って頷いた。




おまけ


「そうだな!」
「つくろうか」
「でも、待て、四郎兵衛。
おにぎりを食べさせてくれ」
「えぇー。遅いんだなぁ」
「四郎兵衛!ちゃんと噛まないと体に良くないんだぞ!」
「お、保健委員の左近だ」
「そういや今日まだ不運発動してないな」
「うるさい!……え?うわぁ!!」
「「「左近!」」」
「大丈夫?」
「ここで屋根から雪が落ちてくるとは……」
「流石不運…保健委員」
「う、うるさぁい!早く雪だるまつくるぞ!」
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