短編

□夕暮れ桜
2ページ/2ページ

一年ボーズが決めた遊びで一緒に遊んでいるとあっという間に時間が過ぎてゆく。
かなり傾いてきた陽にもうそろそろ解散するか、と考える。
と、喜三太が声をあげた。


「食満せんぱい!」


その声に振り返ると、お使いを終えた食満先輩の姿。


「ごめんなー」
「いえっ!先輩お疲れ様です!」
「「「おかえりなさーい!」」」
「ただいま」


我先に、と駆け寄る一年ボーズの頭を撫でる食満先輩。


「せんぱい、お花見行きたかったですぅ」
「しんべヱはお団子食べたいだけでしょー?」
「えへへ」


その言葉ににっ、と食満先輩は笑って紙を取り出した。
その紙は外出届。


「じゃあ、今からお花見行くぞ!」


呆気に取られたのもほんの一瞬。
きっと今、おれも一年ボーズと同じような顔をしているだろう。


「「「「はい!」」」」


食満先輩に続いて歩く。
そして到着したその場所はあまり学園からは離れていない。
だが、一回も来たことはない。


「ここな、穴場なんだぞ」


そう食満先輩が言ったのは嘘ではないだろう。
その場所には一本の大きな桜の木。


「うわぁ!きれーい!」
「だろう?」
「確かに綺麗っす」


おれたちが桜の木に見とれているその隣で食満先輩はなきやら背負っていた風呂敷をがさがさと探っている。


「そして、花見といえば?」


そんな声と一緒に出されたのは団子。


「お団子だ!」
「おいしそう……」


一本づつ配り、腰をおろした食満先輩の周りに一年ボーズが座る。


「おいしいです!」
「そうか」


再び食満先輩が微笑んだその時、少し強い風が吹いた。
そして、その風にのって桜の花びらが舞う。


「うわぁ……!」
「きれい……!」


夕暮れに舞う桜の花びらはとても綺麗で。


「たまにはこの時間の花見もいいだろ?」
「はい!」


食満先輩が帰るぞ、と声をかけるまでおれたちは夕暮れの桜に見とれていた。
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ