短編

□どっち?
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六年い組潮江文次郎だ。
俺は今、立花仙蔵と食堂に来ているのだが……


「文次郎、あれを見てみろ」
「あ?」


仙蔵が示す方向に顔を向けると、そこには
自他共に認める仲の良いは組の口喧嘩という光景が広がっている。


「あほのはのことだ。くだらないこ「伊作、留三郎」
行くのかよ!ったく」


結局俺も食堂のおばちゃんから定食をもらってそこに向かうことにした。
……まぁ、なんで喧嘩してるのか気にならないといったら嘘になるしな。


「で、一体どうしたというのだ?」
「「聞いてくれるのか(い)!?」」
「聞いてやるから静かにしろ。おばちゃんが此方を見ている」


仙蔵の言うとおり、さっきからおばちゃんがこっちを見ている。
俺も今、ここでおばちゃんに怒られて昼飯が食えなくなるのはご免だ。


「「僕/俺と!」」
「だから静かにしろと」
「留三郎/伊作どっちが子供だと思う!?」」


仙蔵の言葉を途中でさえぎって尋ねる二人。
……見ろ。仙蔵なんか口あけて間抜けな顔のまま固まってるぞ。


「だって伊作がこの苦瓜食べらんねぇって言うんだぞ!?」
「苦いものは苦いんだ!
留三郎だって薬苦いから飲めないって駄々こねるじゃないか!」
「飲めないんじゃなくて飲まないの!」
「じゃあ今度から甘いやつじゃなくていいんだね!?」
「そうは言ってないだろ!?」


だんだんヒートアップする喧嘩(趣旨が変わってる気がするが)に終止符をうっったのは、
俺でも仙蔵でもなく食堂のおばちゃんだった。


「静かにしなさーい!!」


こっちにむかって投げられた包丁をよけたものの、
どこからか屋根を突き破って飛び込んできたバレーボールにあたった伊作。
このあたりはさすが不運だ。


「伊作!?」
「ごめんごめん!!
こっちにボール飛んでこなかった?」
「……あった」
「あ、ホントだ!」
「こ、へ、い、たぁ!ちょうじぃ!」
「留三郎ゴメン!」
「……すまん」
「伊作にも謝れ!」


結局は組の喧嘩はどこにいったやら。
いつもと変わらない光景になっている。


「文次郎」
「なんだ」
「今日も平和だな」
「……あぁ」
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