短編

□一時間忍たままとめ 壱
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「寒い」


ごそごそと手と足を布団に潜りこませて来た三郎。
三郎は冷え性みたいだから手と足がすごく冷たい。


「冷たいよ三郎」
「そんなこと言ったって寒いんだ」


あー、雷蔵あったかい。
なんて呑気に言ってるけれど僕はその冷たさですっかり目が覚めてしまった。


「寒いねぇ。明日はもしかして雪かなぁ」
「雪か。寒いのは嫌だな。だけどあの馬鹿左右は喜ぶだろうな。しかも明日休みだし」


雪を見て笑顔になる八左ヱ門と勘右衛門を思い浮かべ、笑みが溢れる。


「でもいつも三郎だって一緒に雪合戦してるじゃないか」
「……あれはあいつらがうるさいからだ」
「じゃあそういうことにしてあげよう」
「……雷蔵の意地悪」
「何がだい?」
「……おやすみ」
「うん、おやすみ三郎」


何年双忍をやっていると思ってるんだい?
君が考えることなんて僕にはお見通しだよ。
それこそ、君が僕たちと雪合戦するのを楽しみにしていることだって。
そのことに気づいている三郎は拗ねて寝る体勢にはいってしまったようだ。


「ふわぁ……」


ん……だんだんと眠くなってきた。
隣からは規則正しい寝息が聞こえてくる。
その寝息につられ、もう一度欠伸をして僕も目を閉じた。



* * *



「らーいぞ!さーぶろ!」
「起きろー!」


うるさい。


「ん……」
「お、雷蔵起きた」
「「さーぶーろー!」」


もう、一体なんだって言うんだ。


「うるさい、馬鹿左右」


それだけ言って再び布団に潜る。
布団の中は暖かい。


「しょうがない。八左ヱ門!」
「おう!」
「寒っ!?ひゃ!?冷たっ!?」


生き生きとした八左ヱ門と勘右衛門の声に本能がまずい、と告げる。
しかし、身構える間も無く布団が剥がされ、なにやら冷たい物が触れた。


「あはははは!三郎何今の声!」


爆笑する四人を睨みつけ、首筋に残る冷たい何かに手を伸ばす。
それは昨日の夜雷蔵と話していた、


「雪?」
「せいかーい!」
「ということで、やるぞ雪合戦!」


あぁ、昨日話していたことが起こってしまった。


「つか、待て!私まだ寝巻き!」
「すぐに起きない三郎が悪い!」
「しかし、勘ちゃんは優しいので着替えるまで待ってあげよう」


このまま着替えずにいても二人に引っ張られていくのは同じだろう。
雷蔵も諦めて制服に着替えている。
私もため息を一つついて制服に手を通した。


「着替えた、っぷ!」


変な声が出たが、私は悪くない。
襖を開けた途端に雪玉を投げて来た八左ヱ門と勘右衛門が悪い。


「おーまーえーらー!」
「へへーん」
「覚悟しろ!」


ばっ、と手を伸ばして雪玉を作る。
もちろんそれは二人に復讐するため。
それから縁側に呑気に座っている雷蔵と兵助を巻き込むため。
どうせ雷蔵には私が雪合戦を楽しみにしていたことなんてばれている。
だったらもっと楽しくしようじゃないか。


寒いのは嫌いだ。
だけど、こうやって大好きな奴らと過ごすなら大歓迎だ。


なーんて、絶対言ってやらないけれど。
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