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□変わらねェさ
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土方は酷く焦っていた。


普段通らないはずの道を走る自分がひどく慣れていて嫌気が差してくる。
この道を使うことなんて、月に一度有るか無いかの頻度なのに。

夏の夜独特の生温い風が身を包み、気持ちが悪い上に動きが鈍くなっている気がして舌打ちをした。


今朝方、前将軍であった徳川定定が、牢獄の中で息絶えていたのだ。
その死に様は余りに残酷なものだった。
死んだあとも何度も刀を突き刺されただろう体は、人間と言うにはあまりに無残なもので。

何度も死体を見て、何度も斬り合いをしてきた土方でさえ、胃から何かがこみ上げる思いがした。


━━心当たりのせいもあるのか。


あの人物を、あそこまで酷い殺し方で殺るなんて。そんなのを平然とやってのけるであろう人物に、土方は目星がついていた。


その限りなく100%に近い犯人の元へ走っているのだ。


時間が惜しい。早く、とにかく早く行かなくては。



土方は汗で額に張り付く前髪を鬱陶しそうに掻きあげて、走るスピードを上げた。
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