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□変わらねェさ
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どのくらい走っただろう。ただひたすらに手足を動かしていた気がする。
肩を上下させて息を整える土方の目の前には、かぶき町から少し離れた場所にひっそりと佇む家があった。
高杉の居場所など、自分にはここしか分からない。しかし、犯行が今朝ならばそう遠くへは逃げられないので、ここにいる確率は高い。
着流しの前合わせをきゅっと締めて深呼吸をすると、土方は玄関に手をかけた。
「不法侵入かよ、真選組副長様」
家に入ってすぐに聞こえた低い声に、土方は目を見開いた。
暗くてよく見えないが、高杉がすぐそこにいる。近づいて、くる。
どうするべきかと考えている内に、土方は腰を引き寄せられて、前から伸びてきた手に戸をピシャリと閉められた。
「……高杉」
「んだよ。何しにきた?」
抱き締められたまま耳に声を吹きこまれる。ひくりと体を震わせた土方の反応に、高杉の口は緩く弧を描いた。
「オメーが言いたいことは分かってらぁ。そんだけ言われて帰られちゃたまったもんじゃねぇからな」
だから入れよ。
いつになく優しい顔をした高杉を不思議に思う。敵(かたき)の一人を討つことができたから? いや、そうじゃない。
清々しさとか満足とか、そんな顔じゃなくて、なんかこうもっと、嬉しそうだった。
そんな高杉を見るのは初めてで、土方は戸惑いながらも少し遠くなった高杉の背中を追った。