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□1PAGE 少女は出会う
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チクタク チクタク


何もない静けさの空間に時計の針の音が響く。
周りは暗く、私のいる場所は夜の公園。

ついさっきまで遊んでいた子供達は皆、帰り1人で時を過ごす。

あまりにも静かな公園は耳が痛くなりそうだ。

「はぁ…」

ため息を零して、左手の薬指に光るリングを見る。すこし前まで、隣にいた男がくれたものだ。
見つめては無償に悲しくなって、そっと外して近くの茂みに放り投げた。

次は誰にしようか、別に誰だっていいんだ。
誰かが隣に居てくれれば…
それに、あの人以上に愛せる人なんてもう、いない。

ふとその時、俯いていた顔の正面に誰かの足があるのに気がついた。

「お前、こんな時間になにしてんだ?」

顔を上げるとそこには、初めて見る男の顔。
服装からすると、高校生くらいか?

「おい、聞いてんのか?」
「ん?ああ…」
「お前、こんなとこでなにしてんだ?もう、7時過ぎだぞ?」
「だから?」
「用がねぇなら早く帰れって言ってんだ」

男は不機嫌そうに言う。
お前こそだな。

「帰る家がないのだ。仕方あるまい」
「は?帰る家がない?家出?」
「元からない」
「え、マジ…?」
「真実だ。分かったのなら、君も早く帰りたまえ」

男は少し驚いた表情で私を見る。
私はそんなのお構いなしにその場から立ち去ろうとする。が、それは男によって拒まれた。
腕に違和感を感じる。男につかまれているのだ。

「か、帰る場所がねぇからって、ここにおいてくこたぁ出来ないだろ…!」
「………」
「俺んち、来いよ」

先程とは打って変わって今度は私の方が驚いてしまった。

私はひかれる手を振りほどけないまま、男について行った。
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