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□七つの大罪〜悪食の少年〜
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近頃立海大付属中周辺で起こる事件は、どんなに肝の据わった者でも背筋を冷やさずにいられないようなものだった。
最初の事件は学校内の鶏小屋で起こった。
立海の飼育小屋では兎やハムスター、鳥などが飼われていたが、その中でも鶏だけが無残に体を食い千切られ死んでいたのだ。
それもその様子は相当残忍で、第一発見者の柳生比呂士はその場で卒倒したという話もある。
と、ここまでなら野良犬や何かが犯人、ということで終わるだろう。
だが、その場を片付けた教員が犬がやったなら有り得ないだろう痕跡を見つけてしまったのだ。
まず、鶏小屋の扉は破られていたのではなく、鍵が壊されていたのだ。
しかも明らかに人為的と思われる方法で。
さらに決定的だったのが、鶏の肉に残された『歯形』だった。
犬の牙のように犬歯だけが深くのめり込むのではなく、均等に並んだ、つまり人間の歯並び。
学校側がこの事実におののき、隠蔽をはかったのは言うまでもない。
しかし、悲しいかな、人の口に扉は立てられないとも言う。
これは三日後には校内全員が知る事象となった。
その噂も冷めやらぬ内に二つ目の事件は起こった。
近所によくいる類の何匹もの犬を飼い溺愛するおばさん、通称犬田さん(もとの名字が太田であったことからついた)の犬がなんと全て殺されたのだ。
しかも食い千切られた様な体で。
もちろん犬田さんは半狂乱になり、犯人を捜し回ったが手がかりは限りなくゼロに近かった。
さらに相次いで周辺の飼い犬、飼い猫、野良犬、野良猫を問わずに多数の生き物が食い荒らされた状態で発見されたり、姿を消したりした。
そしてもっとも恐れていた事態―――人間が姿を消した。
中等部三年テニス部所属のジャッカル桑原。
放課後部活で最後まで残っていた彼は、部室に荷物を残して消えた。
その日練習に付き合っていた丸井ブン太は、ジャッカルに鍵閉めを頼んで先に帰った、と証言した―――。
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