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□七つの大罪〜怠惰の薬〜
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料理本ではよく、『煮込み』という方法が見受けられる。
この手法を無くしては世界の食事の半分も出来上がらないという程に不可欠なものだ。
その手軽さもさながら、効果は大きい。
具材に味が染みるし、出汁もよく出る。
調理の基本中の基本である。
でも手順を怠って煮詰めすぎてしまうとそれはあっという間に逆効果になってしまう。
具材は崩れて形をなくし、汁はとても口にはできないような味になる。
これはあくまで小さな例だ。
ここから導きだせるのは一つの極論。
何事も度を越せばすべてが台無しになる。
この経緯はこの世のすべてに当てはまる。
大概のことには適度な度合いがあって、それを超えてしまうとすべてが水の泡になってしまうのだ。
けれど人はそれに気付かない。
気付けない。
いつのまにか一線を越え、そして、すべてなくしてから、やっと自分のしたことに気付く。
後悔しても取り戻せない。
まるで煮詰まってしまった料理のように。
そしてその過ちは、じわじわと侵食し、すべてを腐らせる。
人の生さえも狂わせるほど。
歪ませ、ねじ曲げ、壊してゆく。
その少年も壊れていった。
歪んだ友情と愛情を抱えて。
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