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□七つの大罪〜番外A〜
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「一人…逃げられてしまいましたねぇ」
特に困った風でもなく、青年が呟いた。
手元で緑色の髪の人形を弄びながら、思案にふける。
「何も知らない分千歳君よりもまだマシでしょうけど」
べきっ
ぐちゃ
ごりっ
噛まれ、肉が引きちぎられ、骨が砕ける。
絶え間なく聞こえてくるその音に、青年は顔をしかめた。
「丸井君、もう少し静かに落ち着いてお食べなさい。まだまだたくさんありますから」
丸井と呼ばれた彼は一瞬だけ食べるのをやめてこちらを見た。
口のまわりを血で汚し、その目の焦点は定まっていない。
「今日中に全部片付けちゃってください。こんなもの残しておいても何の価値もありませんから」
爪先でつんつんと死骸を蹴る。
眠っているかのような安らかな顔。
でももうすぐこの首筋にも牙がたてられることだろう。
餓えた悪魔の牙が。
「さて、次は片割れを潰しに行きましょうか。とても愛されている、彼を」
薄い唇が笑みをかたどった。
どこからともなく取り出した鉄の鋏を月明かりにかざす。
「さぁ、素敵な愛憎劇を見せてください」
刃に反射した光が部屋の片隅に立つ青年の姿を照らした。
どこもかしこも白い彼のシルエットの中、少しくすんだ色の包帯がいやに映えていた。