虜 〜メロウハニィ〜
□#23 AM00:05【前編】
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倫子の悲鳴を聞きつけ野次馬のように数秒で集まった。
これはどう見ても私が被害者。
勝ったわと倫子は心の中で笑っていた。
だが、少女の思惑をぶち壊す言葉を祐貴は口にした。
『お怪我はありませんか?
私がグラスを渡す時気をつけていればドレスを汚す事は無かったのですけれど』
祐貴は少女に駆け寄りハンカチで少女のドレスを拭き優しく言葉をかける。
すると会場は急に騒がしくなった。
「祐貴さんの手を煩わせるなんて何を考えているのかしら」
「祐貴さんはあぁ言ってるけど、あの子を庇ってるんでしょ…?」
「お優しいわよね」
会場からは倫子を批判し、祐貴を味方する声が聞こえた。
「何してるんだバカ娘が!
祐貴様申し訳ありません。お怪我はありませんか?」
少女の父親が駆け寄り祐貴に問う。
『私は大丈夫ですのでお嬢さんの方を見てあげて下さい』
倫子は腹綿が煮え繰り返るような気持ちだった。
祐貴は倫子にこれを使ってとハンカチを渡し終えると、倫子にしか聞こえないような小さな声で呟いた。
『金丸のお嬢様にしては幼稚な事するのね。呆れたわ』
そう一言を言うとすっと立ち上がって倫子の側を離れた。
こうして倫子の思惑は一瞬にして壊された。
東條 祐貴と言う人物に…
喧嘩を売る相手をもっと選ぶべきだろう。
祐貴の方が一枚上手だった。
そうして倫子は一つの決心をした。
東條を陥れ、東條祐貴を潰してやる。
女の嫉妬から始まった出来事は事を大きくし今回ナオまでもを巻き込んで起こってしまった。
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