虜 〜メロウハニィ〜
□#23 AM00:05【前編】
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数年前―――
金丸社主催のパーティーに呼ばれ祐貴と兄の劉は参加した時のこと。
『今日はお招き頂いてありがとうございます』
祐貴は金丸の社長へ挨拶に来ていた。
黒のパーティードレスに身を包み髪を下ろしたその姿は、可愛いと言う言葉よりも妖艶で美しく周りの目線を釘付けにしていた。
だが一人金丸のお嬢様はそんな祐貴が気に食わなかった。
金丸のパーティーだと言うのに周りの奴らの話題は東條や祐貴についてばかり。
東條と契約する機会を、祐貴やその兄劉との縁談をと狙う者も少なからずいた。
またそれが気に食わない倫子。
"潰したい"…そう言う感情が込み上げて来た。
そうだ、何か恥をかかせれば…!
倫子は思い付いたかのように不敵にふっと笑うと、テーブルにあるワイン片手に祐貴へと近付いた。
注目されるのは私だけでいい。
私が善人で貴女が悪人になればいいわ。
そう…そのまま潰れてしまえ!!
少女は祐貴の前まで来てにこやかに笑った。
まるで事が起こる前触れのように…
倫「初めまして祐貴さん…」
『初めまして。この度はお招き頂いてありがとうございます』
祐貴もまた笑顔で答えた。
すると少女からの笑顔は消えまるで獲物を捕えたかのような目付きへと変わった。
倫「……この場に来たことを後悔するといいですわ」
少女の口からすっと出た言葉は会場のがやに掻き消されたかに思われた。
少女はにやっと笑うと手に持ったワインを自分のパーティードレスにぶちまけ甲高い悲鳴を会場へと轟かせた。
祐貴は容易く理解出来た。
この少女は私が気に食わないのだと。
少女は自分を悲劇のヒロインに仕立てあげるべくこのような行動に出たのかと…
馬鹿馬鹿しくてヘドが出そうだ。
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