御話

□この恋はいつも D
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まずは慎ちゃんのお部屋へ向かう。

「慎ちゃん、朝餉の時間だよ、起きてる?」

そう声をかけると

「おはようございます、姉さん・・・ちょっと・・・今・・・」

お部屋から、がたがたと物音がしていて
中を窺うと、慎ちゃんは
なにやら探し物をしていた。

「どうしたの?」

「髪を結おうとしたんッスけど、紐がみつからないんッス、おかしいな・・・」

慎ちゃんの部屋はきちんと片付いているのに
無くし物なんて珍しいな。

一緒に探してあげようかなと思ったけど
それよりも良いことを思いついちゃった。

「慎ちゃん、慎ちゃん」

「何ッスか?」

探し物の手を止めず慎ちゃんが答える。

「私がこの紐で結ってあげるよ」

私は自分の髪をまとめていたヘアゴムを外して
慎ちゃんに見せた。

「何ッスか、これ」

不思議そうにヘアゴムを見る慎ちゃんに
いいからいいからと肩を押して
机の前に座らせる。

持っていた櫛で慎ちゃんの髪を解く。

慎ちゃんの髪は真っ直ぐで
さらさらとしていて
触っていて気持ちがいい。

「慎ちゃんの髪って、綺麗だね」

「男はそんなこと言われても、あんまり嬉しくないッスけどね」

そっけない言葉とは裏腹に
ちょっと赤くなって俯いた慎ちゃん。

可愛いな、と思ったっけど
言わない方がいいよね。

手早く髪をまとめると
いつも慎ちゃんがしているように
高い位置で縛った。

「ありがとうございます、姐さん」

笑顔でお礼を言ってくれた慎ちゃんに

「じゃあ、私は他の皆を起こしてくるね」

そう声をかけて
慎ちゃんの部屋を後にした。
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