御話
□この恋はいつも D
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「えっと、次は以蔵・・・」
以蔵はいつも早朝から
庭で剣の稽古をしている。
庭へ出て以蔵を探した。
ブン、ブン、と竹刀が空を切る音がしている方へ向かう。
「以蔵、朝餉の時間だよ」
そう声を掛けると
「ああ」
そう返事をしたけど素振りをやめようとしない。
むううう・・・。
なんだか無性に気を引きたくなって
竹刀の前へと進み出る。
「おわあぁ、あ、危ないじゃないか」
素っ頓狂な声を上げて
以蔵はやっと手を止め、私のほうを見た。
汗が朝日に光っていて
いつもの精悍な身体が
さらに引き締まって見える。
なんだか急に照れくさくなって
あわてて背を向けると
「朝餉だから、早くね」
そう言い残して足早に立ち去る。
「なんなんだ、いったい・・・」
後ろから以蔵の呆れた声が聞こえてきたような・・・。
ああ、何やってんだろう私。