短編集

□紅葉
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これはまりやが幕末に来てすぐのころの話。

まりやを薩摩藩邸へ誘おうと思って久しぶりに寺田屋に来ていたんだけど・・・。




寺田屋での数日間、龍馬さん達と過ごして
まりやが皆に大切にされていることが分かった。

私は、まりやを薩摩藩邸に連れて行きたかったんだけど
まりやの思いを大事にしたい。

私は今日、一人で薩摩藩邸に帰ることにした。



「かずは今日薩摩藩邸に帰るんか?」

「寂しくなるッスね」

龍馬さんと慎ちゃんは私を引き止めてくれたけど
何時までもここで甘えてなんかいられない。

「また、来るといい」

武市さんはにっこりと笑って頭をなでてくれた。



「迎えが来たようなんだが・・・」

「迎え?」

以蔵がやって来て言う。

その表情はなんだか戸惑っているようだった。



「どうしたんじゃ」

訝しがる龍馬さん達と一緒に玄関へ出てみると
そこには、不機嫌そうに腕組みしている大久保さんが立っていた。



「大久保さんが迎えに来たんか?」

驚く龍馬さんに

「ついでがあっただけだ」

ぷいっと横を向いて答える大久保さん。

だけど、私は大久保さんが迎えに来てくれて嬉しかった。

玄関を出で、大久保さんに駆け寄る。

けれど、大久保さんは私の方を見ずに
私の見送りに出て来ていたまりやに向かって

「おい、まりやとやら、散歩に付き合え」

「え?」

戸惑っているまりやに

「早くしないか」

大久保さんがいらいらど声を掛けるもんだから
まりやは慌てて表へ出てきた。

「どこへ連れて行くぜよ」

龍馬さん達の声を無視して、大久保さんはさっさと歩いて行ってしまう。
私とまりやは顔を見合わせると慌てて大久保さんの後を追った。
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