短編集

□想いを自覚するころには
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<かずside>

「お前もまりやに会いたいだろう?」

朝餉の後、炊事場で洗い物を手伝って部屋に戻った私に、大久保さんが言った。

今日は寺田屋で龍馬さん達と大久保さんが会合を行う日。

そこへ一緒に連れてってくれるって。

大久保さんはなかなかまりやと会えない私を気に掛けてくれていたみたい。

私は、久しぶりにまりやと話せることに嬉しくなって、急いでお出かけの準備をして

大久保さんの後に付いて寺田屋へ向かった。






「かずさん、よく来たね」

寺田屋に着くと、玄関には武市さんが出迎えてくれていた。

武市さんは私を見ると笑顔で歓迎してくれた。

「こんにちは」

大久保さんの後ろからぺこりと頭を下げると

武市さんと目が合い、久しぶりに見るその綺麗な笑顔に、なんだか恥ずかしくなる。

大久保さんの後ろでもじもじしていると

「私への挨拶より優先されるとはな」

私たちのやり取りを見ていた大久保さんが呆れた顔で武市さんを見る。

「ああ、すいません。大久保さん、こちらへ」

大久保さんに今気付きましたと言わんばかりの表情で

武市さんは大久保さんと挨拶を交わした後

大久保さんを先導しながら奥の座敷へと向かう。

途中、武市さんは私の方へ目線を向けて

「かずさんは、まりやさんが待っているよ」

「はい、ありがとうございます」

私は、もう一度武市さんに頭を下げてから

良く知る寺田屋の廊下を進み、まりやの部屋へと急いだ。
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