御話

□この恋はいつも A
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龍馬さんと以蔵さんに連れられて着いた先は
寺田屋と言う船宿だった。

宿の入り口で、龍馬さんが
女将さんらしき人と何か話している間に
私は以蔵さんに促されて、奥の部屋に案内された。

二階の奥の部屋の襖を開けると
中に入るように言われて
私は恐る恐る部屋の中へ進む。

「ここで待っていろ」

目も合わせずそう言うと
さっさと出て行ってしまおうとする以蔵さん。

私は、慌てて声を掛けた。

「あの・・・」

「・・・なんだ」

以蔵さんは相変らすこちらを向いてくれないけど
私の声かけに立ち止ってくれた。

「ありがとうございました。さっきは・・・鬼なんて言って、ごめんなさい」

そう言って、ぺこりと頭を下げる。

「・・・気にしなくていい」

しばらく間があってから
ぼそりと以蔵さんが言う。

少し顔が赤くなっているみたい。

「以蔵さんって良い人なんですね」

最初の印象から随分柔らかな印象になった感じがして
思わずそう言うと

「・・・以蔵でいい・・・」

「え?」

「そう呼ばれる方が慣れている」

赤い顔をさらに赤くしてふっきらぼうにそう言うと
皆を呼んで来ると言い残して部屋を出て行ってしまった。


部屋で一人になった私は
改めて部屋の中を見回してみた。

そう広い部屋ではないけど・・・。

端の方に沢山の本が積み上げてあり
一部は崩れかけている。

机の上には手紙のようなものが置いてあり
脇には木製の小さな地球儀があった。

そっと回してみると、カラカラと音がした。



坂本龍馬かあ。

歴史は苦手だったからよく知らないけど
未来じゃ有名人だよね。

こんなところで生活してたんだ。


坂本龍馬に関して、史実を思い出そうとしたけれど
薩長同盟、大政奉還、思いついた言葉はあっても
その意味までは覚えていなかった。

もっと歴史の勉強しておくんだったな。

今頃にになって後悔した。
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